第三者意見

今年度のレポートも、経営トップの明確な意志に基づいて、戦略的で積極的なCSR経営に取り組んでいることが的確に示された内容となっています。

日本福祉大学 執行役員
国際福祉開発学部 教授

千頭ちかみ さとし

経営環境の変化に対応した攻めの姿勢が明確

社長メッセージの冒頭で「パラダイムシフトの進展」と述べられているように、自動車産業を取り巻く環境が大きく変わろうとしています。その中で、2017年4月にスタートした鋼カンパニー、鍛カンパニー、スマートカンパニーの3つのカンパニーを軸とした攻めの姿勢がより明確に示されています。各カンパニーのプレジデントのメッセージからは、今まで蓄積してきた高い技術力という基盤の上に立って、収益力の高い新たな展開を目指していこうとする意志が伝わってきます。さらに、企画創生本部、お客様本部、モノづくり・未来創生本部という3つのコーポレートオフィスがカンパニーを横串で支えチェック・統制の役割を担う骨組みが、確かなガバナンスを保証できるものと評価できます。

会社の変革と、社員の意識および働き方改革との相乗効果

2020年度中期経営計画のめざす姿のひとつとして、「社員が幸せな会社づくり」が掲げられ、2018年1月に制定されたAichi Wayの中でも、伝承・創造と並んで感謝が精神的支柱として明確に位置づけられていることが高く評価できます。そして、カンパニー制導入による組織全体の改革と呼応する形で、社長メッセージおよび特集2に示されているように社員の働き方改革に全面的に取り組み始めたことが明確に示されています。カエルパネルやカエル当番など、社員が働き方改革を職場単位で円滑に進めていけるような工夫が凝らされていると同時に、チーム制導入とあわせた基幹職のマネジメント改革に取り組んでいることが示されており、部下育成と部下への感謝という基幹職の意識醸成は、社員一人ひとりの労働に対する誇りと意欲向上にも大きく寄与するものと考えます。ボランティア活動への参加人数が毎年大きく増加していることは、このような意識改革の成果のひとつかもしれません。

重要課題(マテリアリティ)の明確な設定と、それに基づく体系的な記述

2016年度に制定された6つの重要課題(マテリアリティ)と、その課題解決に向けた重要経営指標の設定や体系的なCSR計画が明確に示されています。その結果、レポート全体として、愛知製鋼が持続可能な社会実現に向けてどう貢献しようとしているのかを的確に表現した内容となったことが高く評価できます。
また、レポートの前半に3つの特集を配置することによって、愛知製鋼が何に力点を置き、どこに向かってどのように進もうとしているかを、より明確に示しています。

2020年環境取り組みプランの着実な達成

2020年環境取り組みプランに示されている15項目については、スラグ発生原単位が若干悪化したことや、過去2年間の生産量の増加などによって、生産における副産物発生量およびより高いレベルで設定したCO2総排出量削減の社内目標には到達していないものの、その他のすべての項目については、着実に成果を上げていることが示されています。従来から、4Sリエンジなども含め継続的に環境負荷の低減に取り組んできているため、さらなる改善余地は大きくないと考えられますが、目標達成に向けて引き続きの努力に期待したいと思います。

読みやすさとわかりやすさの深化

今年度のレポートは、WEB版との連携を図りつつ、重要課題ごとの記載内容をさらに精査するとともに、レイアウトの改善や重要な数値の強調など、読み手に対する訴求力を高める工夫が随所に盛り込まれています。その結果として、伝えるべき情報を的確に掲載することと、読み手にとっての読みやすさ、わかりやすさとが、高いレベルでバランスが取れていると評価できます。

最後に

第114期は、2020年度中期経営計画の目標に向かって、大幅に営業利益が向上しています。カンパニー制の導入が、戦略的な経営の推進と社員の働き方改革の両軸でさらに効果を生み出し、企業と社会との共有価値のさらなる発展に寄与していくことを期待いたします。

※当意見の執筆に当たっては、経営層を含む関係者へのヒアリングも行っています。

第三者意見を受けて

千頭先生には、2010年度より継続して貴重なご意見ならびにご提案をいただき、感謝申し上げます。
今年度は、新たに策定した2020年度中期経営計画の達成に向けて、カンパニー制による事業推進力強化および働き方改革など、New AICHI STEELに向けた新たな取り組みを推進してまいりました。また、2018年1月にグループ社員全員で共有する精神的支柱であるAichi Wayを制定しました。

これらの取り組みについて専門家のお立場から高く評価いただけたことは、今後進めていく上での励みになり、自信ともなりました。ご期待にこたえ、さらなる充実を図りその成果を社会への貢献と年輪的成長に繋げていけるよう努めてまいります。

ご指摘いただいた環境取り組みプランの生産における副産物低減およびより高いレベルで設定したCO2総排出量低減社内目標については、現在の旺盛な受注への増産対応のため今回目標未達となりましたが、引き続きより一層の努力を行い、鉄スクラップを原料として製品を生み出す資源循環型企業として存在価値を高めていけるよう取り組んでまいります。

今後は、2018年3月に完成した新本館ビジターセンターを拠点として、より広く工場見学の受入れを行うなど地域の皆様をはじめとしたステークホルダーの皆様とのコニュニケーションを深め、「いつまでもこの地にあり続けてほしい企業」を目指し、CSVの視点で継続して地域社会・環境へ貢献してまいります。

上級執行役員 広報部担当
村上 一郎