環境

環境マネジメント

2030年ビジョンの経営指針の一つである「持続可能な地球環境への貢献」に向け、2025年までのアクションプランとして「アイチ環境取り組みプラン2025」を策定しています。2025年までに達成すべき目標を定め、その実現に向け、「エコエネルギー」「エコプロダクション」「エコマネジメント」の3本柱を中心に取り組んでいます。

  取り組み 2025年目標
エコエネルギー
  • エネルギー効率の追求
  • 製造プロセス改革
  • クリーンエネルギー導入
CO2排出量:29%削減(2013年度比)
エコプロダクション
  • エコ製品・エコ技術開発
  • 次世代インフラへの貢献
  • 資源循環の追求
埋立処分量:2,400t/年以下
エコマネジメント
  • 環境責任の徹底
  • 自然・生物多様性保全
  • 環境情報発信・開示
中新田環境指標種:27種誘致

推進体制

取締役会の監督下で社長を議長とする「地球環境会議」を中心に、PDCAサイクルを効果的に回し、環境マネジメントの推進に取り組んでいます。地球環境会議では会社方針およびアイチ環境取り組みプランに基づいた、戦略の実行や目標の設定、進捗状況の確認を行っています。地球環境会議の下部組織として7つの分科会を設置し、担当範囲を明確にすることで効率的・重点的に活動を専門的な視点から推進しています。またグループ会社との連絡会を設け、情報や好事例を共有することでグループ一体となって活動しています。

体制図
分科会 役割
環境保全
  • 異常・苦情の防止、生物多様性や緑地保全活動
CN推進
  • CO2に関する情報収集、戦略立案等など
生産省エネ
  • 省エネ・生産効率向上などの改善
プロセス改革
  • 生産工程における革新的技術の開発など
資源循環
  • 再使用、廃棄物・原材料の再利用の取り組みなど
エコ製品
  • 環境貢献製品の開発など
啓発・広報
  • CN、SDGsなど活動推進に向けた社内外へのメッセージ発信

エコエネルギー

当社のCO2排出量の約9割は、鉄スクラップの溶解や鋼材の加熱などで使用する電力と都市ガスによるものです。2050年でのカーボンニュートラル実現に向けて策定したロードマップに基づき、これまで培った省エネ技術を深化させる取り組みと日常における徹底したムダの排除、そして抜本的な製造プロセス改善によるエネルギー削減を推進しています。2023年度は251件の省エネ活動に取り組みました。また事務所の各階ごとに消費電力を用途別に見える化し、省エネ活動に貢献した事務所を表彰する「事務所省エネチャレンジ表彰制度」を実施するなど、製造プロセス以外の省エネ活動にも積極的に取り組んでいます。

2023年度CO2排出量内訳
(愛知製鋼単体のScope1+Scope2)

2023年度CO2排出量内訳

資源循環

エコプロダクション

当社は自動車やインフラの解体などから発生する鉄スクラップを高品質な特殊鋼製品や自動車部品などに再生することで鉄資源の循環と経済価値の両立を実現している資源循環型企業です。資源やエネルギーの効率的な利用により、資源投入量や消費量を抑えつつ、製品・部品の再使用、廃棄物・原材料の再利用の取り組みを更に加速させることで、循環型経済(サーキュラーエコノミー)への移行を目指します。

資源循環の追求

生物多様性

エコマネジメント

当社の持続的な成長には地域・自然との共生が必要との考えに基づき、関係団体と連携し、地域の環境保全活動に取り組んでいます。

生物多様性保全の取り組み

2012年度より「カブトムシのすむ森づくり」を合言葉に、当社の知多工場に隣接する中新田緑地において、50種の指標種が集まる環境づくりに取り組んでいます。当社を含む企業や行政、学生、専門家、NPOなどの11団体が連携して進めてきた「知多半島グリーンベルト」には、中新田緑地も含まれており、2023年度から開始された環境省の認定制度により、最初の「自然共生サイト」の一つとして認定されました。
また、当社は事業用水として長野県王滝村を水源とする愛知用水を使用しています。その水源を守る活動の一環として、2006年から「水源の森林(もり)」育成活動に取り組んでいます。2019年には長野県王滝村との間で「森林(もり)の里親」契約を締結しました。約28.4haの森林を「愛知製鋼グループの森」として、除伐や枝打ち作業を当社従業員や家族が定期的に実施しています。2023年度には350本の苗木を植樹し、王滝村や地元住民の方々と協力して豊かな森林づくりを進めています。

  • 「民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域」を国が認定する区域のことで、2021年6月のG7サミットで合意された「G7 2030年 自然協約(G7 2030 Nature Compact)」に基づく、日本における30by30の取り組みの一環

産業廃棄物最終処分場維持管理

プラスチック使用製品産業廃棄物排出量

プラスチック使用製品産業廃棄物排出量

TCFD提言に基づく情報開示~カーボンニュートラルに向けて~

基本的な考え方

当社は、主要製品である特殊鋼条鋼の原料である鉄スクラップの溶解や、鋼材の加熱など各種製品の製造工程でCO2を直接/間接的に排出しています。このため、気候変動への対応をリスクと機会の両面から重要な経営課題と捉え、2050年までのカーボンニュートラル早期実現を目指し、脱炭素に向けた取り組みを加速しています。
鉄スクラップを原料としてモノづくりを行う資源循環型企業として、素材や部品を通じて持続可能なモノづくりに貢献してきた強みを活かし、脱炭素社会の実現に向け、サプライチェーン全体でCO2排出量削減に貢献する製品・サービスを開発・提供していきます。

TCFD提言への賛同と情報開示

2021年にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明しました。気候変動が事業に与える影響とそれによるリスクと機会をシナリオに基づいて分析し、持続的な成長に向け、経営戦略に反映するよう検討を進めています。ここではTCFD提言が推奨する「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」のフレームワークに基づき、気候関連の取り組みを開示しています。
気候変動に係る戦略の実行や目標設定、進捗を管理する機関として地球環境会議を設置しています。7つの分科会で構成しており、担当範囲を明確にすることで効率的・重点的に活動を推進しています。2024年度からは全社横断でサステナビリティ課題への対応を企画、推進するサステナビリティ推進室を新設し、さらなる取り組みの充実を図っています。

ガバナンス

当社では、気候変動を経営の重要課題(マテリアリティ)の一つとして特定し、KPIを設定のうえ、目標達成に向け活動を推進しています。
気候変動を含む経営に重大な影響を及ぼすリスク・機会への対応方針・事業戦略・取り組み状況は、経営における重要事項を審議する「経営トップミーティング」で議論・審議しています。取締役会はその報告を受け、特に重要な事案は審議することで監督機能を果たしています。

ガバナンス
2023年度の主な付議事項
会議体 主な付議事項
取締役会
  • 2026年のCO2排出削減目標・計画(審議)
  • 省エネ・非化石エネルギー転換の対応(審議)
  • CO2排出量実績と削減計画の進捗状況(毎月)
経営トップミーティング
  • GXに向けた今後の課題・対応(審議)
  • 非化石エネルギーの導入検討(審議/報告)
  • 気候変動・水セキュリティへの対応(審議)
  • GXリーグ活動実績(報告)
  • CO2排出量実績(毎月)

リスク管理

リスク全般は以下のプロセスで特定、評価、監督を実施しています。気候変動関連のリスクは、地球環境会議や経営トップミーティングで審議・報告することで影響と対応を明確化しています。

リスク管理プロセス

戦略

国際エネルギー機関(IEA)および、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)報告書などを参照し、今世紀末までに産業革命以前と比較し、世界の平均気温上昇が「1.5℃」と「4℃」の2つのシナリオにおける2030年の社会を想定し、リスクと機会の分析を行いました。

シナリオ別分析結果
シナリオ 分析結果 シナリオに対する当社の対応
1.5℃
  • 主要顧客である自動車業界において電動化が進展することで、従来の内燃機関向けの特殊鋼および鍛造品などの需要は減少。その一方で高強度ギヤ用鋼などの電動車向けの特殊鋼、鍛造品および電子部品などの需要が増加。また自動運転市場の拡大も見込まれる
  • 製造時のCO2排出量が少ない電炉鋼材のニーズが高まる
  • 特殊鋼・鍛造品の需要減少はリスクとなる可能性があるものの、基幹事業としての強みである電炉による自動車向け特殊鋼・部品や電動車向けパワーカード用リードフレーム、磁気マーカーによる自動運転支援システムなどを有することから新たな成長の機会となり得る
4℃
  • 異常気象の激甚化や台風や大雨などによる自然災害の増加による生産停止、サプライチェーン寸断などのリスクが高まる
  • 異常気象や高温による農作物の収量減少・品質低下のリスクが高まる
  • 自然災害への適応、事業継続計画(BCP)の継続的な見直し、サプライチェーンの強靭化による被害の最小化を推進
  • 新事業として推進している鉄供給材である次世代肥料「PDMA」の普及拡大による農業問題解決への貢献が期待できる
主なリスク・機会と対応の方向性(一部抜粋)
シナリオ 気候関連事象 当社への影響 対応の方向性
1.5℃ 自動車業界の大変革
  • 電動化
  • 自動運転
リスク
Down
  • 電動化の進展による特殊鋼需要の減少および鍛造品などの部品需要減少
  • 電動車における特殊鋼、鍛造品需要の捕捉による事業維持
機会
Up
  • 電動車向け材料・製品の需要増加
  • 自動運転市場の拡大
  • 高機能・高付加価値な材料・製品の開発(次世代電動アクスルなど)
  • 自動運転支援システム「GMPS」の普及拡大
社会の脱炭素要請の高まり
  • 電炉鋼需要など
機会
Up
  • CO2低排出・リサイクル性に優れる電炉鋼需要の増加
  • 多様化する顧客ニーズに応える高品質・高機能な製品開発と安定供給体制の構築
カーボンプライシング導入
  • 炭素税など
リスク
Down
  • 化石燃料の使用に伴う操業コスト増加
  • 再生可能エネルギー価格上昇による操業コスト増加
  • 省エネ生産技術の開発や高効率設備の導入検討
  • 自家発電等での再生可能エネルギー導入・拡大
原料・諸資材の供給制約 リスク
Down
  • 鉄スクラップ需要増に伴う供給不足・品質低下・価格高騰
  • 希少金属・希土類の調達不安定化
  • 顧客と連携した循環スキームの増強・拡大、低品位スクラップ活用技術の確立
  • 調達マルチソース化などサプライチェーン管理の充実
4℃ 自然災害
  • 激甚化・頻発化など
リスク
Down
  • 自社拠点被害、サプライチェーン寸断による操業停止
  • 継続的なBCP対策、サプライチェーン強靭化による影響最小化

指標と目標

当社は2030年度の自社の事業活動によるCO2排出量の削減目標を2013年度比50%削減とし、脱炭素社会実現への貢献に向けて取り組んでいます。生産工程における技術開発の推進や全員参加による徹底した省エネ活動に加え、太陽光発電をはじめとする非化石エネルギーの導入拡大など、CO2排出量削減に向けた取り組みを積極的に推進しています。2023年度は2013年度比20.5%削減となり、着実に成果をあげています。

指標と目標

2050年カーボンニュートラルへのロードマップ

目標の達成に向けたロードマップを策定し、計画的に取り組んでいます。①省エネの深化・追求②再生エネルギーの活用③脱炭素技術の開発・導入を軸に、工場ごとのロードマップをブレイクダウンし、計画的に活動を展開しています。
2023年度には当社グループの国内子会社8社についてもGHG削減に向けたロードマップを策定し、活動を開始しました。

2050年カーボンニュートラルへのロードマップ

具体的な取り組み

再生可能エネルギーの活用

当社では特殊鋼の製造工程において大量の電力を使用することから、徹底した省エネや効率性の向上に加え、再生可能エネルギー由来電力への転換が必要不可欠であり、積極的に導入を進めています。2022年度には「トラッキング付FIT非化石証書」※1の購入と「CNな都市ガス※2」の導入により、7つの工場のうち、5工場(関、岐阜、東浦、電子部品、刈谷)で実質的なカーボンニュートラルを実現しました。2023年度には2工場(関、岐阜)において、オンサイトPPAを活用した太陽光発電の稼働を開始し、年間700t以上のCO2を削減しました。
電力以外にも、「中部圏水素利用協議会」への参加を通じ工場で使用する都市ガスなどのエネルギーの水素への転換を検討するなど、多様な再生可能エネルギーの活用にチャレンジすることで脱炭素社会の実現に貢献します。

  • 再生可能エネルギー(再エネ)の普及促進のために設けられた「固定価格買取制度」の対象となる非化石電源(石炭や石油といった化石燃料を使用せずに発電する電源)によって発電された電気の環境配慮の価値を証書化したもの
  • 天然ガスの採掘から燃焼に至るまでの工程で発生するCO2をCO2クレジットにより相殺(カーボンオフセット)したカーボンニュートラルLNGを活用するもの

社会との協働

2050年カーボンニュートラル実現と社会変革に向けて、産官学が協働する場として、経済産業省が主導し2023年度に設立された「GXリーグ※1」に参画しています。脱炭素社会の実現には環境に優しいグリーン商材の普及が必要ですが、そのためには製品の持つ環境価値が評価される社会制度が欠かせません。当社はそのルール形成に向けた取り組みの一つである「グリーン商材の付加価値付け検討WG※2」に参加し、2023年12月にWGとして「グリーン商材の付加価値付けに関する提言書」を策定・公表しました。また電炉業界としてのルールづくりにも参加するなど積極的に取り組んでいます。
これらの活動を通じて、脱炭素に貢献する製品・サービスの普及と日本の特殊鋼業界の競争力維持・強化を図っていきます。

  • GX(グリーントランスフォーメーション)に積極的に取り組む企業群が、経済社会システム全体の変革のための議論と新たな市場の創出のための実践を行う場として、2022年3月に経済産業省が設立
  • GXリーグに賛同を表明した企業による、賛同企業提案型ワーキンググループの一つ。グリーン商材・低炭素商材の価値創生に関わる共通ルールに関する提言の策定に向け活動している

スコープ別CO2排出量

スコープCO2排出実績

管理指標 CO2排出量(千t-CO2 算定方法
2013年度
(基準年)
2021年度 2022年度 2023年度
Scope1 239 256 222 224
  • 下記<Scope1、Scope2算定方法>を参照
Scope2 556 378 394 410  
Scope1+Scope2(2013年度比削減率) 795 634 616 634
(20.5%)
生産量排出原単位(kg-CO2/t) 546.4 470.1 540.4 531.4
(9.3%)
Scope3
1. 購入した製品・サービス - 948 793 822
  • 購入した原料・資材等の購入量(重量または購入金額)に排出原単位を乗じて算定
2. 資本財 - 30 37 50
  • 設備投資額に排出原単位を乗じて算定
3. Scope1,2 に含まれない燃料およびエネルギー関連活動 - 126 110 114
  • 購入した電力・燃料の使用量に排出原単位を乗じて算定
4 輸送、配送(上流) - 43 37 36
  • 省エネ法報告の輸送距離およびカテゴリー1購入量の輸送手段、距離に排出原単位を乗じて算定
5. 事業から出る廃棄物 - 11 10 10
  • 種別の廃棄物量に排出原単位を乗じて算定
6. 出張 - 0 0 1
  • 移動手段別支給金額に排出原単位を乗じて算定
7. 雇用者の通勤 - 3 3 3
  • 移動手段別支給金額に排出原単位を乗じて算定
  • 上表は千t未満を四捨五入しており、0は500t未満を表します
  • 集計対象と係数などの見直しに伴い、過年度数値を遡及して修正しています
<集計範囲>
Scope1、Scope2:愛知製鋼単体のエネルギー起源 
Scope3:愛知製鋼単体における該当カテゴリー
<Scope1、2算定方法>
「地球温暖化対策の推進に関する法律」(環境省)「エネルギー資源標準発熱量・炭素排出係数一覧表」(資源エネルギー庁)および契約電力会社の各年度の排出係数に基づき算定
<Scope3排出原単位>
「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース(Ver3.4)」(2024年3月、環境省)および「LCIデータベース IDEA version 2.3」(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 安全科学研究部門 社会とLCA研究グループ一般社団法人サステナブル経営推進機構)