社会

ダイバーシティ&インクルージョン

基本的な考え方

多様な価値観・能力・経験を持った従業員が、互いに認め合い、相互研鑽して能力を発揮することが、新たな価値創出につながると考えています。そのための人材確保・育成や社内環境整備の充実に取り組んでいます。

キャリア採用

不確実性が高まっている現代において、事業を通じて社会課題をスピード感を持って解決するには、これまで以上に高度な知識や多様な経験、能力が必要と考えています。そのため、特にDX領域や研究開発などの重点領域において、キャリア採用に注力しています。2024年度は総合事技職において7名を採用しました。(中途採用比率:28%)

採用人数(総合事技職)

採用人数(総合事技職)

女性の活躍推進

女性が自らのありたい姿に向けて、柔軟な働き方を選択できる環境の整備に取り組んでいます。当社では、研修などを通してキャリア形成を支援するとともに、ライフイベントと仕事の両立をサポートするための、育児支援制度や介護支援制度を軸とした「ナイスファミリー制度」に加え、「コアタイムのないフレックスタイム勤務」「在宅勤務制度」などを導入しています。職場や上司の理解を促進し性別に関係なく育児休業を取得しやすくするため、全ての基幹職に対して育児支援制度に関するe-Learningを実施するなど、意識面への取り組みにも注力しています。その結果、2024年度の男性従業員の育児休業取得率は60.4%となりました。

  2023年度 2024年度
女性管理職比率※1(人数) 1.3%(5名) 1.8%(6名)
男性従業員の育児休業取得率※2(人数) 69.7%(53名) 60.4%(52名)
男女賃金差異※1 ※3(%) 全労働者 65.4% 68.0%
正社員 68.2% 70.3%
パート・期間社員 62.0% 65.3%
  • 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」の規定に基づき算出
  • 「育児休業、介護休業等育児または家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児または家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出
  • 当社の給与制度および評価制度において、性別による差異はなく、男女の勤続年数や基幹職の女性比率、給与水準の異なる職種別男女比率などが、男女における賃金差異の要因です

シニアの活躍

労働力人口の減少や現場力の維持・向上などの観点から、シニア社員(60歳以上)のパフォーマンスを最大限に引き出すことが重要と考えています。当社では、定年退職後から年金受給開始までの期間、希望者全員が継続して働くことができる「ナイスシニア制度」を設けています。シニア社員が安心感と高い意欲を持って働き続けられるよう労使で議論しながら、作業環境の整備や処遇の見直しを実施しています。また、今後のキャリアプランや働く意義をあらためて考える機会として、55歳到達者を対象に「働き方」や「退職金と年金」「健康と食生活」などをテーマとしたセミナーを開催するなど、シニア社員の自律的なキャリア形成に向けた取り組みも実施しています。2024年度の定年後の再雇用率は89%(73名中65名)となっています。

障がい者のイキイキ職場拡大

計画的な定期・中途採用を実施するとともに、障がいのある従業員が、製造現場や事務部門など幅広い職場で活躍できるよう、さまざまな施策に取り組んでいます。仕事への意欲や個人ごとに異なる特性と業務内容の適性を重視し、職場実習や面談を重ねたうえで、配属職場を決めています。配属後も各職場にてメンターを選定し、本人との定期面談や受け入れ職場へのフォローなどの定着支援や配慮を実施するなど、能力を最大限に活かすためのさまざまな施策を実施しています。また働くうえでの障壁を取り除くため、バリアフリー整備やキャリア形成の支援、従業員の啓発活動や意識向上の取り組みを行い、受け入れ職場の拡大にも注力しています。特性と業務内容の適性を重視し、職場実習や面談を重ねたうえで、配属職場を決めています。

人材育成

基本的な考え方

「伝承」「感謝」「創造」をキーワードとする愛知製鋼グループの従業員全員が持つべき普遍的な価値観である「Aichi Way」を実践し、どのような環境でも必要とされる「基礎力」と変化に応じた必要な「専門性」を高め、主体的に考え行動できる人材の育成に取り組んでいます。

基礎力と専門性の強化

業務に必要な基礎力として、仕事の基本である「問題解決力」、強い現場力の基盤となる「技能」に加え、新たに「デジタルリテラシー」を加えた三つの柱で強化に取り組んでいます。問題解決力と技能は現地現物でOJT(現場実務教育)を通して身につけ、その効果をOff-JT(集合教育・研修など)で高めることを基本としています。デジタルリテラシー教育は個人の習熟度に応じた教育メニューをe-Learningを中心に提供することで、効率的にスキルアップを図っています。また自己啓発の取り組み支援として、通信教育や学習補助・資格取得奨励制度を充実させ、専門性の強化を図っています。

基礎力と専門性の強化

技能向上

業務遂行上必要な専門知識、技能の向上を図るため、階層別研修でPM実技研修を実施。また、社員が自主的に挑戦している技能検定に対して、奨励金や訓練環境・情報の提供などにより、技能向上をサポートしています。

研修指導員育成人数(累計)

研修指導員育成人数(累計)

技能検定合格者数

技能検定合格者数

幹部人材育成の取り組み

経営人材確保のため、継続的かつ計画的な育成に取り組んでいます。候補者の自覚を高めるため、経営役員自らが講師を務め、マインドセットに重点をおいた内容となっています。全社視点で「見て」「考え」、経営発想ができるマネジメントとリーダーシップの習得に加えて、胆力や視野、スピード感など、より高い職責を担うために必要な素養を磨く教育を実施しています。

OJTとOff-JT

人材育成には「現地現物」での経験や学びが必要不可欠との考えから、OJTを積極的かつ計画的に実践しています。従業員一人ひとりが将来のキャリアプランを考え、その実現に必要な技能や知識の習得と能力開発に向けた業務アサイン・目標について、定期的に上司と話し合う仕組みを設けています。また各種研修では、OJTとOff-JTの相乗効果を目的に管理・監督者が後進を指導することや、参加者の意識を高めるために経営トップが自らの経験なども交えて講話するなど、研修の効果を高めるための工夫をしています。

デジタルリテラシー教育

競争力を維持・向上させるには、スマートファクトリーなど製造現場での取り組みに加え、業務そのものや組織、企業文化・風土を変革するためのDX推進が必要と認識し、DX人材の育成強化に取り組んでいます。デジタルリテラシー基礎教育を実施するとともに、DXアセスメントにより個人別にDXレベルを把握し今後の教育体系構築に活用することで、DXリーダーの育成を加速させています。また、「さわれるDX展示会」や「生成AI活用コンテスト」「Copilot出前教育」を実施するなど、全社でのDX推進に努めています。

DX人材の目標

DX人材の目標

人権尊重の取り組み

基本的な考え方

持続可能な社会の実現に向け、ビジネスにおける人権尊重の重要性は近年ますます高まっています。企業に対しての人権に配慮した事業活動が強く期待されているなかで、当社は従業員の幸せにつながる活動を含め、ステークホルダーの皆様一人ひとりと真摯に向き合い、事業活動に関わる全ての人々の人権を尊重し、広く社会から信頼され、選ばれ続けるための取り組みを推進しています。

人権方針

愛知製鋼グループ人権方針は、当社共通の価値観である「Aichi Way」などをはじめとした、「人を大切にする経営」を明確化し、社内外への理解促進と意識向上を目的に、2023年3月に制定されました。本方針は、国際連合の「ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)」に基づいており、当社グループ全ての役員・従業員が遵守すべき人権に関する最上位方針として位置付けるとともに、サプライヤーを含む全てのビジネスパートナーにも理解、支持するよう表明しています。

当社の「人権方針」の詳細についてはこちらをご覧ください

推進体制

経営企画本部長を統括責任者に、総合企画部サステナビリティ推進室を事務局として、人事部・総務部・調達部など関連部門が連携し、活動計画の策定、各部門での取り組みの共有、人権に対する社会動向の共有・議論などを行い、その内容を適宜、経営トップミーティングに報告しています。取締役会は報告を受けることで、監視・監督しています。

推進体制図

推進体制図

各部の役割

部門 役割
人事部
  • 人権啓発、教育など
  • 多様な人材の活躍支援など
総務部
  • 苦情処理メカニズムの整備・運用
調達部
  • 人権デューデリジェンス(取引先)
  • 取引先との協働・連携活動
総合企画部
サステナビリティ推進室
  • 人権デューデリジェンス(社内・グループ各社)
  • 人権尊重の取り組み企画・運営
  • 情報開示

会議体の役割

会議体 構成 人権尊重における役割
取締役会 議長:取締役会長
社外取締役2名、社内取締役4名
  • 人権方針の制定/改定の決議
  • 人権尊重の取り組み状況などについて執行からの報告を受け監督
経営トップ
ミーティング
議長:社長
会長・副社長、カンパニープレジデント、本部長
  • 人権尊重に関する方針や活動計画の審議
  • 企業行動指針、調達方針など
  • 人権課題の評価・特定、予防・軽減措置など

従業員への啓発・浸透

当社では人権方針に基づき、「人を大切にする経営」の実現に向け啓発・浸透活動を積極的に行っています。2024年度はこれまで実施していた階層別教育での人権教育に加え、海外グループ会社へも教育を展開し、グループ全体として人権を尊重した行動の実践を推進しています。また、毎年の「コンプライアンス意識調査」を通じて、従業員の理解度・浸透度を確認し、啓発活動を継続していきます。

人権デューデリジェンス

事業活動に伴い発生する人権リスクに対応するため、国内グループ会社や主要取引先、社内から収集した情報をもとに、愛知製鋼グループの人権リスクをマッピングし、重要課題の特定とそれに伴う防止・軽減策を決定しました。2025年度は決定した施策の推進と有効性評価を行い、サプライチェーン全体の人権リスク低減に努めていきます。

人権デューデリジェンス

ハラスメント対策

ハラスメントは個人の尊厳を不当に傷つけ、職場の秩序を乱すばかりでなく、経営に重大な影響を与える問題であると捉え、ハラスメントのない職場づくりに労使が一体となり取り組んでいます。ハラスメントを防止するための措置や会社・従業員が遵守すべき事項を定めた「愛知製鋼ハラスメントガイドライン」を策定し、全役員・従業員へ教育しています。またハラスメントに関する専用相談窓口を社内・社外に設置しているほか、職場ごとに相談員を配置することで組織的に発生の抑止・早期発見・早期対応に努めています。2024年度は14件の相談・通報が寄せられました。労使双方を委員とする調査委員会で速やかに精査・事実確認を行い、厳正な対処や管理監督者への教育などを通じ、再発防止に取り組んでいます。また、職場相談員自らがハラスメントに関する「相談員ニュース」を定期的に発行し、職場全員に展開することや、ハラスメントに関する教育を全従業員に実施することで、意識向上に取り組んでいます。

相談窓口の設置

内部通報制度や社内の相談窓口、誰でも利用できる人権問題受付窓口の設置などを進めてきましたが、2024年度は相談内容ごとの対応部門やフローの明確化を実施しました。また、外国人労働者の相談窓口としてトヨタグループ各社が利用できる「JP-MIRAIアシスト」を対象社員へ情報提供するなど、幅広いステークホルダーに向けた苦情処理メカニズムの整備を実施しています。2025年度は窓口のさらなる実効性を高める活動をしていきます。

ステークホルダーなどとの主な対話機会

ステークホルダーなどとの主な対話機会

人権取り組みのロードマップ

人権取り組みのロードマップ

健康経営

基本的な考え方

当社は創業以来、人を大切にする経営を実践してきました。人を大切にする経営とは、従業員が心身ともに健康で活動的な生活を送り「価値ある人生」と「従業員・家族の幸せ」を実現し、社会への価値提供につなげることです。「従業員の健康・安全」を重要課題と位置づけ、心と身体の健康保持・増進に努め、人にやさしい職場づくりを推進しています。

健康宣言

愛知製鋼 健康宣言

素材づくりを通じて社会を支え、世の中に必要とされ続ける存在であり続けます。そのために、健康を企業の力とし、かけがえのない財産である従業員を大切にする経営を推進してまいります。

  1. 「人の健康」を何よりも大切にし、社員とその家族の健康寿命の延伸に取り組みます。
  2. 危険のない安全な職場を目指し、心身ともに健やかに働き続けられる環境を育みます。
  3. 社員一人ひとりが互いに健康にも関心を持ち、助け合い、家族のように温かく思いやる「笑顔あふれる会社」を目指します。

推進体制

健康経営は経営戦略の柱の一つと考え、人事部、安全健康環境部を中心に、健康保険組合・労働組合とも連携し、継続的に改善を行っています。
社長が議長の中央安全衛生会議に計画、結果を報告し、重要施策は必要に応じて経営トップミーティングに上程し承認を得て職場、従業員に展開していきます。
各職場の安全衛生委員会ではより具体的な施策や取り組みについて、現場との直接的な意見交換を行なっています。

推進体制

健康経営戦略マップ・目標指標

当社は、従業員一人ひとりがイキイキと活躍できる職場づくりを目指すため、健康診断後の要受診者率、肥満者率、高ストレス者数、疾病休業日数率の指標を活用して改善を進めています。最終的にはエンゲージメント調査や東京大学開発のSPQ検査を用いて、心身の健康と働き甲斐を総合的に評価しています。

健康経営戦略マップ

健康経営戦略マップ

主な取り組み

健康づくり

健康診断実施と事後措置

愛知製鋼では、法定の一般定期健康診断受診率は100%を維持しています。健康診断事後措置として、二次健康診断の受診勧奨、労災二次健康診断、生活習慣改善の保健指導、セミナーなど、健康リスクレベルに応じたサポートを実施しています。労災二次健康診断は社内での実施機会を提供することで、受診しやすさに配慮しています。

定期健康診断受診率 (愛知製鋼)
年度 2022 2023 2024
定期健康診断受診率(%) 100 100 100
がん検診

がんの早期発見・早期治療につなげるべく、血液検査による各種腫瘍マーカー、食道・胃がん等(胃部レントゲン写真、胃カメラ)、女性特有のがんについては乳がん、子宮頸部がん、卵巣がんについて、機会提供を行なっております。

健康チャレンジ8

健康づくりの指標として、適正体重、朝食、飲酒、感触、禁煙、運動、睡眠、ストレスの8つの項目をまとめた「健康チャレンジ8」の実施率向上に取り組んでいます。

健康診断の問診票の集計結果(喫煙率や運動習慣者率等)
年度 2022 2023 2024
適正体重(BMI18.5以上25未満)(%) 65.2 63.8 61.6
朝食を毎日食べる(%) 79.6 80.7 80.6
禁煙している(吸わない)(%) 68.9 70.2 71.3
一日30分以上の運動を週一回以上(%) 38.1 38.9 41.0
禁煙

喫煙者の健康リスク低減と、受動喫煙による健康被害防止のため、禁煙対策に取り組んでいます。
2023年度から段階的に敷地内禁煙を進め、2024年5月以降は敷地内全面禁煙としています。
喫煙者の卒煙支援として、看護師による職場への出前教育による集団支援、継続的支援を行う個別禁煙相談会を行っています。

禁煙出前教育(1)
禁煙出前教育
禁煙出前教育(2)
健康イベント(ウォーキング大会、ヨガ教室)

東海市と協力し、しあわせ村においてウォーキングイベントを定期的に開催しています。イベント開催時には、健康チェックブースを出して健康意識を高める取り組みをおこなっています。
愛知製鋼企業年金基金体育館(アスカム)において、定時後にヨガ教室、ボクシングエクササイズ教室、ピラティス教室を開催し運動の啓発活動を実施しています。

ウォーキングイベントでの陸上競技部選手による開会挨拶
ウォーキングイベントでの陸上競技部選手による開会挨拶
アスカムでのヨガ教室
アスカムでのヨガ教室
食育(食生活改善セミナー、食堂ヘルシーメニュー)

従業員の健康づくりを支援するため、食育を推進しています。社員食堂では、野菜を豊富に使用したメニューを提供し、栄養バランスの取れた食事を通じて生活習慣病予防や健康維持をサポートしています。今後も、健康的な食習慣の定着を目指し、食事環境を整えてまいります。

野菜を多く使用したメニューの提供
野菜を多く使用したメニューの提供

メンタルヘルスケア

メンタル相談窓口の設置、一般従業員・管理監督者双方への教育、精神科顧問医によるメンタル不調者への相談対応等により、発生の未然防止と早期発見・早期ケアに取り組んでいます。

ストレスチェック

年に1回、全従業員を対象にストレスチェックを実施しています。高ストレス者には医師による個別面談を行い、早期のケアに取り組んでいます。高リスク職場へは集団分析結果のフィードバックを通じて必要な支援を行い、心の健康づくりを推進しています。

ストレスチェック
年度 2022 2023 2024
受験率(%) 99.4 98.5 98.5
高ストレス者率(%) 7.8 8.6 8.6
専任スタッフの配置

精神科顧問医によるメンタルヘルス不調者への相談対応等により、発生の未然防止と早期発見・早期ケアに取り組んでいます。メンタル相談窓口を設置し、メンタルヘルスケア専任スタッフがメンタルヘルス不調の社員からの相談、メンタルヘルス不調の部下がいる上司・職場からの相談対応を行なっています。2022年度には復職支援プログラムを刷新し、職場と連携を図りながらメンタルヘルス不調による休業者の復職をサポートしています。

健康教育

階層別教育

入社時、昇格時にメンタル・フィジカル両面の教育を研修カリキュラムに組み入れて開催しています。E-ラーニングにより事前に知識を学習し、就業研修ではグループディスカッションを中心とした内容の教育にすることで効果的なスキルアップを支援しています。

特定保健指導

生活習慣病予防対策として、厚生労働省が定める基準の該当者に対して特定保健指導を行っています。特定保健指導を就業時間内に受講できるよう利便性を高め、今後も健康保険組合と連携をして生活習慣病発生の未然防止を目指しています。

節目年齢教育

25、30、35歳の社員に対し、一日研修を実施しています。若年者に教育を行うことで、年齢を重ねても社員の健康が維持・増進できることを目的としています。

安全

基本的な考え方

当社グループは「安全は全てに優先する」との認識に立ち、安全衛生基本理念に基づき、構内で働く全ての人が安全・安心に働ける職場環境を構築し、「安全文化を有した企業」への変革を目指して取り組んでいます。

安全衛生基本理念

「安全な作業、確実な作業、熟練した作業、安全な作業は作業の入口である。わたしたちは、まずしっかりとこの入口を通りましょう」

活動方針

「災害ゼロ」に向けて、安全マネジメント、本質安全設計、安全人間づくりの三本柱を軸に安全活動を展開しています。

活動方針

推進体制

安全と品質は、付加価値を生むための基盤であるとの認識に基づき、リスクマネジメント本部を全社のけん引役として、全社の活動を推進しています。安全は安全健康環境部を中心に、「全ての災害・事故はゼロにできる」という信念のもと、全社方針をカンパニー・本部、グループ会社に加え協力事業所とも共有することで、構内でともに働く人々が、安全かつ健康的に働ける職場環境の構築に取り組んでいます。

推進体制図

推進体制

労働災害の防止

当社では労働災害ゼロに向け、リスクアセスメントを実施しています。特に重大および重篤な災害につながるハイリスク作業に対しては、原因を取り除きリスクを低減する本質安全化による改善を計画的に実施することで、未然防止に努めています。また全労働災害に対して、背景を含めて発生した真因を明らかにしたうえで、当社グループおよび協力事業所へ周知することで再発防止に努めています。

休業災害件数・休業度数率

休業災害件数・休業度数率

2024年度の取り組み

安全マネジメント

トップ点検会

経営層が問題を抱えている職場へ出向き、現場での困り事を現地現物で共有することで、安全に関する取り組みのスピードアップを図っています。

現地現物での未然防止活動

管理監督者が安全に特化する『安全専念タイム』を設定し、現地現物で作業者の困り事の吸い上げや、安全を確認する活動に取り組んでいます。

安全専念タイムでの作業の安全確認
安全専念タイムでの作業の安全確認
トップ点検会
トップ点検会

本質安全設計

リスクアセスメントに基づいたハイリスク低減

リスクアセスメントで抽出されたハイリスクな作業や設備をより安全にするために改善し、未然防止活動を促進しています。

危険・有害性を排除した設備導入

新規設備導入および既存設備の改造を行う際には、企画・設計の段階から人と危険源を分離する本質安全化を図り、リスクを低減しています。

安全人間づくり

安全キーマン育成

1995年から、職場の安全衛生活動の核となる強い人材を育成するための安全衛生専門教育を行い、安全衛生管理レベルの底上げに取り組んでいます。

教育・訓練

作業における労働災害の危険性を実機やVRで学び体感する安全道場や、日常の安全意識と技能訓練の成果を確認・研鑽し合いレベルアップする技能競技会を設けています。また、火災・爆発を想定した東海市消防本部との合同防災訓練などを行い、労働災害・産業事故防止に取り組んでいます。

安全キーマン育成教育の様子
安全キーマン育成教育の様子
安全道場
安全道場
技能競技会でのフォークリフト作業の様子
技能競技会でのフォークリフト作業の様子
合同防災訓練
合同防災訓練

労働衛生

暑熱環境改善

近年の気候変動に対応するためリスクアセスメントを実施し、暑熱対策を強化することで労働環境を改善しています。

暑熱対策(スポット冷風域)
暑熱対策(スポット冷風域)
暑熱対策(気化式冷風機器)
暑熱対策(気化式冷風機器)
暑熱対策(建屋冷風循環)
暑熱対策(建屋冷風循環)

ステークホルダーとの関係

基本的な考え方

マルチステークホルダー方針はこちらをご覧ください。

当社は多様なステークホルダーとの関係に基づき事業活動を行っており、ステークホルダーと良好な関係を築くことは、企業価値向上にとって重要と考えています。ステークホルダーとの積極的な対話を通じて、社会のニーズや当社への期待を企業活動に取り入れるとともに、当社への共感を得ることで、お客様、株主・投資家、従業員、サプライヤー、地域社会などすべてのステークホルダーとともに成長していきます。

従業員との対話促進

当社は「人を大切にする経営」を掲げ、従業員一人ひとりが安心して力を発揮できる環境づくりを通じて、社会への価値提供と持続的な成長を目指しています。価値創造の源泉である従業員の高いエンゲージメントを実現するため、対話を重ねながら、働きがいのある職場づくりや人事制度の進化を推進しています。
労使の信頼関係を基盤に、率直な意見交換を通じて変革のスピードを加速させるべく、カンパニー・本部単位での労使懇談会を年2回開催し、現場に即した課題解決を図っています。モラールサーベイの結果を活用した課題抽出と改善策の実行、職場環境の整備、福利厚生の充実など、従業員の声を反映した取り組みを継続的に行っています。
具体的には、職場旅行や懇親会への補助金支給、独身寮の建て替えなどの施策を通じて、多様性が尊重され、風通しの良い、誰もが働きやすく、働きがいを感じられる職場の実現を目指しています。

ステークホルダーごとの取り組みと実績

ステークホルダー 対話促進の取り組み 2024年度実績
お客様
  • お客様相談窓口:ご意見に対する回答や社内へのフィードバックによる改善
問い合わせ件数 1,561
株主・投資家
  • 株主総会:事業報告、決算事項の審議・決議、株主様との質疑応答
  • 投資家との対話:決算や将来戦略の説明会、個別面談などを通じた対話
機関投資家との対話回数(延べ)45
従業員
  • 定期的な労使協議会:労使間の相互理解、協議・交渉、意見交換
  • 各種意識調査:組織・職場風土や会社生活などに関する調査
労使懇談会・協議会開催数 22
サプライヤー
  • 仕入先総会:調達方針の共有、相互研鑽、パートナーシップの強化
参加社数 126
地域社会
  • NPOなどとの協働・ボランティア活動:社会貢献活動や地域ボランティアへの積極的参加を通じたコミュニケーション
  • 業界団体との連携:日本鉄鋼連盟などを通じた業界共通課題への提言、情報共有の促進
従業員の社会貢献活動参加率 80%

エンゲージメントを高める取り組み

当社では全従業員を対象としたエンゲージメント調査を毎年実施しています。仕事に対する意欲、仕事を通した成長の実感や上司の支援、職場風土など、さまざまな観点で分析した結果を踏まえ、各種人事施策の展開や、各職場のマネジメント改善に取り組んでいます。2023年度には、職場ごとに分析を深め、課題を明確化することを目的に、調査を刷新しました。2024年度から新たなリーダー研修を立ち上げ、そのなかに調査で顕在化した課題への対応を織り込むことで、職場風土の改善を、継続的に行っています。また、今後は取り組みの結果を確認し、さらなる課題解決を行うことでエンゲージメントを高めていきます。

エンゲージメント評価の推移
エンゲージメント評価の推移
  • 2017年度を100とした場合の指数
モラールサーベイ 会社の経営や施策、仕事への意欲などに対する意識を調査(1回/2年)
職場マネジメント調査 総合事技職を対象に職場の運営状況や上司・同僚との関係性などに対する意識を調査(1回/年)
現場力アンケート 技能職を対象に職場の運営状況や上司・同僚との関係性などに対する意識を調査(1回/年)

サプライヤーとのパートナーシップ強化

当社製品の製造には、サプライヤーから供給される優れた原材料や部品、技術が不可欠です。また、さまざまなサステナビリティ課題への取り組みにおいてもサプライヤーとの協働が重要であるとの考えに基づき、緊密なコミュニケーションにより信頼関係を築き、ともに成長し、成果を分かち合うことのできる持続可能なサプライチェーンの構築・強化に取り組んでいます。
毎年4月に「豊鋼会総会」を開催し、事業環境や会社方針を説明し、安全・コンプライアンス・サステナビリティに関する取り組みや目標を共有しています。2024年12月には、サプライチェーン全体の共存共栄と新たな連携と下請企業との望ましい取引慣行の遵守をより具体化したパートナーシップ構築宣言を改訂しました。2025年4月の豊鋼会総会にて126社全社へ配布し、認識の共有を行いました。また2024年度からは豊鋼会で新たに研鑚会活動を開始し、2024年7月には下請法、12月にはサイバー攻撃の実態と対策のポイントに関する勉強会を行い、サプライチェーン全体のレベルアップを図っています。

  • 当社とのパートナーシップ・相互信頼に基づき、相互発展を目指すことを目的とした仕入先で構成された団体

当社の「パートナーシップ構築宣言」の詳細についてはこちらをご覧ください。

地域社会との関係強化

「良き企業市民」として、社会貢献活動などを通じた地域社会とのコミュニケーションが重要との認識に立ち、地域社会との共創活動に取り組んでいます。具体的には「クリーン」「グリーン」「クリエイティブ」「ボランティア支援」を四本柱として活動を展開しています。このような活動を展開することは、地域社会との関係強化に加え、従業員の「社会課題の解決」に向けたマインド醸成と事業活動へのフィードバックにつながると考えています。これからも持続可能な地域社会の実現に向け、従業員一人ひとりが地域社会に貢献できるよう、積極的に取り組んでいきます。

クリーン

「拡大クリーンアイチデー」として、国内外の事業所にて周辺地域の清掃活動を実施
拡大クリーンアイチデー(1)
拡大クリーンアイチデー(2)
拡大クリーンアイチデー(3)

グリーン

聚楽園駅前の美観向上のため、花壇の整備などを実施
花壇の整備(1)
花壇の整備(2)

クリエイティブ

「東海市ものづくり道場」にて小学生を対象にした体験教室と工場見学を実施
東海市ものづくり道場(1)
東海市ものづくり道場(2)

ボランティア支援

従業員から寄せられる寄付金を原資に、地域の福祉施設などへ寄付を行う「愛知製鋼ボランティア基金」を運営(会社も同額を拠出する「マッチングギフトプログラム」を制度化)
愛知製鋼ボランティア基金(1)
愛知製鋼ボランティア基金(2)
愛知製鋼ボランティア基金(3)

研究開発

当社の技術開発は、創業以来の「よきクルマは、よきハガネから。」という志を原点とし、現在では「よき社会は、よき素材から。」へと広げながら取り組んでいます。どの時代においても、素材を通じて社会へ貢献していくことが使命と考えています。
鋼材開発において、脱炭素社会の実現に貢献すべく、製造工程の省略を実現する鋼材開発や、CO2排出の少ない環境製品に適した鋼材開発を推進しています。
ステンレス鋼の分野では、エネルギー・社会インフラの長寿命化に資するステンレス鉄筋バーや、二相系ステンレス形鋼の商品レパートリーの拡充に加え、水素社会に対応する省資源・低コストかつ高い安全性を備えた鋼材の開発に取り組んでいます。
また、鍛造品開発では、次世代電動ユニット車向けに、高機能化・低コスト化を両立する革新的な工法開発や、より高度な鍛造技術の開発を目指しています。開発スピードの飛躍的な向上に向け、デジタル技術を活用したDXの取り組みも推進しています。
スマート事業開発では、車載電子機器用放熱部品や、MIセンサを活用した磁気マーカシステム、モータ用磁石の開発など、進化を続けるスマート社会に向けた新しい素材、製品の開発を行っています。鋼材製造から鍛造品まで自社内で行う「鍛鋼一貫」の強みと創業以来培ってきた「素材業のDNA」を活かし、持続可能な社会に広く貢献できるよう、これからも開発と実用化を進めていきます。

全社横断の標準化活動

標準化とは、新たな製品や技術の仕様、試験方法、表示方法などを共通のルールとして定めることで、社会全体の利便性や安全性を高める活動です。これにより、製品の信頼性が向上し、業界内での協調や国際的な競争力の強化にもつながります。
当社では、こうした標準化の取り組みに沿った研究開発を進めるため、2023年に全社横断組織として研究開発の責任者である開発本部長を最高標準化責任者(CSO:Chief Standardization Officer)とし、CSOを委員長、各カンパニーの事業統括部長および各開発部の部門長らを部門別統括者、各担当部署の室長を委員とする標準化推進委員会を設置しました。本委員会を中心に、戦略的な標準化活動を推進するとともに、社内啓発や標準化人材の育成にも注力しており、事業企画や知的財産に関わる若手中堅社員を対象として、経済産業省のルール形成戦略研修などへの積極的な参加を促しています。
2024年度の活動では、進捗中の全4件のテーマについて、テーマリーダーとCSOとの個別検討会を実施し、これまでの活動実績、現在の課題を確認して、今後の進め方について詳細な議論を実施しました。その結果が2025年6月の第2回推進委員会報告会で共有され、全テーマについて今後の計画が承認されました。

体制図

体制図

知的財産

基本的な考え方

当社は「攻めの知財(事業拡大、挑戦)」「守りの知財(事業安定)」「基盤活動(人材育成、体制づくり)」を重点方針として定め、それぞれに目標を設定し、年輪的成長につながる知的財産活動を目指して取り組んでいます。

推進体制

開発本部長を委員長とし、各カンパニー・本部の事業統括部長および技術系部門の部門長を委員とする発明考案委員会を設置し、知的財産活動を推進しています。

体制図

体制図

開発部門と知財部門の連携強化

これまでは、研究開発の成果である知的財産の保護を目的に活動してきました。これに加え、特許出願において、開発部門と知財部門の連携を強化し、戦略的に特許を出願することで、質の向上に取り組んでいます。特に高額となる外国特許出願において、連携強化の範囲を拡大しており、権利化後の特許権活用まで踏み込んだ案件精査の徹底実施で、費用の最小化と効果の最大化を図り、自社の優位性確保、ビジネス拡大に資する知財活動を目指しています。

品質・生産

基本的な考え方

品質保証活動を推進するため、品質基本方針を定めています。

『品質至上』の考えのもとで、信頼される企業体質を構築し、お客様の期待とニーズに応える魅力ある商品を提供する

品質基本方針はこちらをご覧ください。

当社は創業以来、材料設計から鋼材、鍛造、部品生産までを一貫して手掛ける「鍛鋼一貫」のモノづくり力にこだわり、自動車を中心とした産業界に欠くことのできない、高い強度と耐久性、加工性を有する高機能かつ高品質な材料・部品をお客様に提供し続けてきました。その良品廉価で安定的な製品供給体制を支えてきたのがTPS(トヨタ生産方式)、TQM(総合的品質管理)、TPM(全員参加の生産保全)による品質経営の実践とモノづくり力の進化です。これを基盤に、地政学リスクや急激な物価変動など不確実性が高まるなか、変化に強い生産体制の構築に取り組んでいます。

品質経営の実践、モノづくりの底力向上

TPS活動

TPSの2本柱である「ジャスト・イン・タイム(JIT)」と「自働化」の考えのもと、「徹底的なムダ排除による原価低減」を推進し、効率的なモノづくり力の向上に努めています。各カンパニーはTPSの視点で抽出した原価低減のための改善テーマに計画的に取り組み、その成果は年度末に行われるTPS大会を通じて全社に共有されます。
TPS実践のためTPS研修生制度を設け、人材育成にも注力しています。TPS手法を現場で有効に活用するためTPS推進リーダーとして選抜した人材に、座学による知識学習に加え、ケーススタディなどの実践的学習を行っています。また生産現場への導入をスムーズに進めるため、より幅広い従業員を対象とした教育を階層別に実施することで、役割に応じたTPS手法の習得を推進しています。この「原価低減」と「人材育成」の活動を両輪として、変化に強い柔軟な生産体制を構築しています。

TPS大会
TPS大会
TPS教育を体感型に一新
TPS教育を体感型に一新

TQM活動

TQMをベースとした品質経営の実践

当社はTQMの基本理念である「お客様第一」「全員参加」「絶え間ない改善」をベースに、「品質と仕事の質の向上」と「人と組織の活力向上」による品質経営の実践に向けて、TQM活動に取り組んでいます。

TQMをベースとした品質経営の実践

求められる品質に常に応えるために

自動車産業は100年に一度の変革期にあり、求められる品質も変化しています。当社では求められる品質に常に応えることで、競争力の維持・強化を図っています。そのための取り組みの一つとして、IoTやビッグデータ、AIなどの技術を活用できるエキスパート人材の育成をトヨタグループ機械学習実践道場の場を活用して行い、これまでに師範(2名)、師範代(3名)の育成をしています。

  • 師範:トヨタグループTOP人材 師範代:トヨタグループ準TOP人材

全員参加によるQCサークル活動

当社では職場における業務改善として、QCサークル活動の定着・拡大に取り組んでいます。仕事の問題点を見つけ、課題を明確化し、対策の立案・実行までを一貫してチームで取り組むことを通じて、人材育成と組織の活性化を図っています。2024年度は167サークルが活動を行い、11事例が社外で表彰されました。また、個人による創意工夫提案活動は、毎月1件以上の提案を目標に設定し、1年間を通じて全員参加で達成しています。その成果として2024年度には文部科学大臣賞を4件受賞しました。

  • 従業員が日々の業務効率の向上や品質向上などにつながる工夫を提案することを会社として奨励、評価する活動。効果の大小、年間提案件数などにより褒賞を支給することで仕事への意欲向上を図る。
全国大会 体験事例優秀賞受賞 鍛造工場 駆動・エンジン課(受賞当時の部門名)「good-nessⅡ」サークル
全国大会 体験事例優秀賞受賞
鍛造工場 駆動・エンジン課(受賞当時の部門名)
「good-nessⅡ」サークル
令和6年度「文部科学大臣賞」受賞者
令和6年度「文部科学大臣賞」受賞者

改善テーマ

区分 構成
省人 一人工の追求、設備の寄せ止め
リードタイム短縮 生産の小ロット化、整流化
生産能力増強 非可動時間の低減、原単位の改善
工数低減 非可動時間の低減、MCT短縮
  • 一つの部品を機械で加工・組立するのに要する時間のこと(Machine Cycle Time)

TPM活動

高品質な製品を効率的に生産するために、TPM活動に取り組んでいます。「全員参加」「初期清掃」「設備に強い人づくり」の三つをキーワードに、生産設備に故障が発生する前に分析・対策・改善することで、人の行動や現場の設備を変革し、故障ゼロ・不良ゼロの実現を目指しています。オペレーターの自主保全を最重点活動とし、設備故障・品質不良・労働災害の三つのゼロや、生産ロス削減による生産性向上など、定量的な目標を立て活動しています。
2024年度には、自主保全士1級取得者数360名(取得率31.1%)となり、前年度より91名増加しました。設備総故障件数27.0%削減(2021年度比)を達成するなど、着実に成果が表れてきています。今後もさらなるTPM活動の推進強化に向け、DXを活用したデータ解析や見える化などを通じて、品質向上と効率的な生産体制の維持に努めます。

アイチ流TPM金賞モデルづくり

アイチ流TPM金賞モデルとは、自主保全活動を限量経営・老朽設備活用の観点でDXや「からくり」を活用しながらレベルアップするものです。2023年度から活動を開始し、2024年度に鋼カンパニーの棒鋼圧延課の結束機、鍛カンパニーの第3鍛造課の31Aラインが金賞を取得しています。

  • 限量経営 限られた人・設備で効率的に生産を行い、損益分岐点を下げて利益を出せる体質にする経営