Top Commitment

2030年ビジョンの達成で持続可能な地球・社会に貢献


代表取締役社長 藤岡 高広

コロナ禍における当社の状況

2019年度は、米中貿易摩擦による中国の景気減速に加え、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で世界経済の需要が急激に落ち込む環境下、当社においては生産量の減少はあったものの、原材料の値下がりと昨年から全社を挙げて推進してきた「限量経営」をベースとした収益改善活動が実を結び、やや減収はしたものの、増益となりました。

コロナウイルスによる影響は、2019年度においては軽微に留まりましたが、2020年第1四半期においては、損益分岐点を下回る減産幅となり、極めて厳しい状況となりました。

この危機を乗り越えるため、全社一丸となり「1.安全・品質」「2.社員の健康を守り感染者を出さない」「3.お客さまの生産を絶対止めない」「4.収益への影響を最小限にくい止める」ことを方針として徹底し、稼働体制の見直しや生産調整で継続的な最適操業に向け取り組んできました。

コロナウイルス感染防止策については、当社が経験した1.8事故や自然災害における危機管理対応力が活かされ、対策本部の立ち上げや、対策の推進をスピーディかつ適切に実行できたと感じています。また、社員の在宅勤務や時差出勤なども積極的に導入しました。これは、柔軟な働き方をする上での課題抽出や、将来のあり方を模索する機会になり、働き方改革推進に大いに役立ったことは、この災禍により得られた成果です。

一方、第2四半期については、私はここで潮目が変わると考えています。お客さまの生産量は徐々に回復し増産のフェーズに移っていくことが予想されます。私たちはフレキシブルな生産体制構築と働き方改革の加速により、コロナウイルスによるパンデミックを乗り切り、アフターコロナのニューノーマル(新常態)と呼ばれる新たな環境へ確実に適応することで、未来に貢献し続けます。

業界の大変革に向け私たちがすべきこと

CASEへの対応

現在、自動車業界は「100年に一度の大変革期」を迎えています。

CASE(Connected、Autonomous、Shared、Electric)が加速し、自動車メーカーが、移動に関わるあらゆるサービスを提供する「モビリティカンパニー」となりつつある今、私たちも付加価値の高い部品やシステムを提供できるよう変化していかなくてはなりません。

私たちが貢献すべき分野は、特に自動運転(Autonomous)と電動化(Electric)だと認識しており、自動運転では、当社が実用化を目指して開発に取り組んでいる磁気マーカによる自動運転支援システムである「GMPS(Global Magnetic Positioning System)」のビジネス化に向けた体制を整備しています。電動化においては、電動車向けの電子部品・鍛造品、EVモータ分野での新商品開発に力を注いでいます。

自動運転支援システム「GMPS」自動運転支援システム「GMPS」
「GMPS」に使用される超高感度磁気センサ「MIセンサ」「GMPS」に使用される
超高感度磁気センサ「MIセンサ」
電子部品電子部品
高強度ギヤ付き磁石ロータ高強度ギヤ付き磁石ロータ

基盤強靭化への取り組み

電動化により、今後当社が担う特殊鋼需要が減少していくことは確かです。そのような中、昨年から全社を挙げて取り組んでいる基盤強靭化活動の1つが「限量経営」です。損益分岐点を下げ、寄せ止めをはじめとした、量が変化しても利益を出し続けられるリーンな生産体制の構築に各カンパニーで徹底的に取り組んだ結果、大きな改善が見られました。目に見える形で自分たちが取り組んできた成果が出てきたことにより、社員のモチベーションアップにも繋がっています。

また、グローバルでの連結収益力強化も積極的に推進しています。2019年8月に、インドのバルドマンスペシャルスチール社への出資・技術支援をスタートし、将来のインド国内・アセアン地域への鋼材供給に向けた基盤づくりを進めています。

組織改革も強力に推し進めています。CASEの時代、迅速な意思決定を目的に2017年からカンパニー制を導入していますが、2020年4月、今後起こることが予想されるインフラクライシスや水素社会への対応などにおいて、ステンレス鋼に対する社会からの期待・需要拡大が見込まれることから、新たな事業の柱にするべく、「鋼カンパニー」に含めていたステンレス鋼事業を「ステンレスカンパニー」として独立させました。また、「モノづくり・未来創生本部」を「開発本部」「モノづくり革新本部」に分離独立させ、開発テーマの事業化スピードの加速と、モノづくり機能の基盤強靭化を進める体制を整えました。

また、経営による執行の意思決定スピードを更に速めるために、専務・常務執行役員を統合し経営役員としました。更に、持続的な企業価値創造を引き出すためのインセンティブ付与と、株主との一層の価値共有を行うことを目的に譲渡制限付き株式報酬制度を導入し、ガバナンス強化を図っています。

寄せ止め:設備の集約

創立80周年を迎えた今だからこそ、やらねばならなかったこと

創立80周年にそろった、4つの柱

おかげさまで当社は2020年に創立80周年を迎えました。すべてのステークホルダーの皆さまに深く感謝申し上げます。

2011年の社長就任以来、「世界中で選ばれる会社」を目指し、企業としてのフレームワークを強化してきました。そして、この80周年を迎えた2020年に、愛知製鋼グループが目指すべき姿の指針となる重要な4つの柱がそろいました。

1つ目は、2018年に制定した「Aichi Way」です。これは、社員に向けたもので、全社員が同じ価値観を共有し、心を1つにするための行動規範、精神的な拠り所です。これは私が発案し、役員たちが当社の歴史も勉強しながら議論して作ったもので、「伝承」「感謝」「創造」という大切にしていくべき精神を体系化しました。

2つ目に、社外に向けて愛知製鋼という会社のアイデンティティやありたい姿を示していこうとしたのが、2020年3月に制定したブランドスローガン「つくろう、未来を。つくろう、素材で。」です。当社が素材を原点に、部品やシステムに進化させることを通じ、モノづくりの可能性を広げていく会社になることを社会に宣言するものです。これは、社員のプロジェクトチームによるボトムアップで作られ、全社投票を行って決定しました。ロゴに加えたオレンジのドットは、「モノづくりの真ん中、未来の社会の真ん中」を支えていく愛知製鋼を象徴的に表現しています。社外に対するメッセージだけではなく、社内の求心力を高める旗印にもなっています。

3つ目は、組合と会社が一致団結して困難に立ち向かうことを宣言した「労使協調宣言」の調印です。「豊かな社会の実現」、「ものづくりは人づくり」、「社員の幸せと会社の発展」という3つの誓いがあります。大変革期の今だからこそ、「人」を第一に考え、会社を支えていく「人」同士が信頼し合い、労使ともに同じ方向を向いて「笑顔あふれる会社」を実現していきます。

そして、4つ目が今年策定した「2030年ビジョン」です。

ブランドスローガンブランドスローガン
労使協調宣言 調印式労使協調宣言 調印式

2030年ビジョン策定の考え方

上記を含め、様々な体制整備や改革を行う中で、次には、当社が将来向かうべき方向性を定め、全社員のベクトルを合わせるビジョンの存在が必要不可欠だと感じました。変化の激しい環境の中、これまでのただ年計を作ってやっていくやり方では生き残っていけない。何か、光となるような長期的なビジョンを持って、それを中計や年計に落とし込んでいくようにすることが必要だと考え、「2030年ビジョン」を策定しました。そうすることで、何かひとつ投資するにしてもブレることがないと考えたのです。

激動の時代に10年先を見通すことは難しい。でも、間違っていてもいいから、2030年の我々の姿というのはどのようになっていたいかをみんなで考えようと、各カンパニーや各本部と一緒になって作っていきました。

ビジョンには、私が就任当時から言い続けてきた「Company of Choice Globally」を掲げ、基本方針は「事業とモノづくりの変革で収益力を向上させESG経営を実践」としました。法令遵守、安全、品質、安定供給、この順を守りながら徹底し、今後も継続してTPS(トヨタ生産方式)に基づいた「限量経営」を推進することで、環境が大きく変化する中でも柔軟かつしなやかに対応し、収益力を上げていきます。また、ESG経営にはこれまでも取り組んできましたが、その観点はますます世の中で重要視されており「存在価値のある持続可能な企業」であり続けるため、更に強化して推進していきます。

そして、ESG経営実践のため、地球市民の一員として持続可能な地球・社会に向け積極的に取り組んでいくべき事柄として、SDGsがあると考えています。2030年ビジョン策定にあたっては、各施策とSDGsの関わりを示し、地球規模での課題に対しどのように貢献できるのか全員が意識し、取り組めるようにしました。

2030年ビジョン 3つの経営指針

経営指針として、「持続可能な地球環境への貢献」、「事業の変革で豊かな社会を創造」、「従業員の幸せと会社の発展」の3つを軸に推進していきます。

(1)持続可能な地球環境への貢献

日本鉄鋼連盟が「ゼロカーボン・スティールへの挑戦」を掲げている通り、CO2の削減は鉄鋼業の責務と認識しており、様々な取り組みを行うことで低炭素社会に貢献します。

具体的には、4Sリエンジによるエネルギー効率の向上や、長年にわたって取り組み、ようやく形になった業界初の排熱回収、世界で初めて工場での実証を行った蓄熱システムなどにより、CO2排出量の削減を更に進めていくとともに、ゼロエミッションの達成に向け、リサイクル技術の更なる向上を実現し、企業としての環境責任を果たしていきます。

また、2012年から継続して行ってきた「カブトムシのすむ森づくり」を通じ、生物多様性の維持に貢献していきます。

(2)事業の変革で豊かな社会を創造

既存事業の変革に加え、新規事業の早期事業化で収益力を磨いていきます。素材メーカーから脱却し、商品の付加価値を高め「素材から部品へ」を推進していきます。

例えば、電動車で必要な部品については、素材開発と鍛造技術の組み合わせで、製品に近い状態で提供し、原価低減やお客さまでの工程省略に寄与します。また、電動車用モータユニットでは、「磁石+高強度素材+ギヤ」をセットにした当社の技術が詰まった高速モータの試作品を製作しました。この実用化を推進し、お客さまの期待を超える新しい価値の創造に挑戦します。

新規事業では磁気マーカによる自動運転支援システム「GMPS」、土壌改良に期待が寄せられる鉄供給材による世界を視野に入れた新ビジネス、アモルファスワイヤの医療・セキュリティ分野での活用などの事業化を推進し、地球規模での課題解決に貢献してまいります。

将来ビジネスの方向性

(3)従業員の幸せと会社の発展

1人ひとりの成長のための目標と会社の目標が繋がることで、相互により成長できると考え、社員とのエンゲージメントをより高められる取り組みを推進していきます。

そのための大前提は、社員の安全・安心を徹底することであり、災害ゼロを継続できる場、人、しくみづくりに向けた相互啓発ができる文化を作っていきます。そして、1人ひとりの個性・強みを認め、活かすことで組織としてより進化できるよう、ダイバーシティへ対応できる環境の整備を継続して行っていきます。

また、1人ひとりの生産性向上に向け、自工程完結の考え方と問題解決のメソッドを全員が理解できるような教育を充実させました。今年は私も自ら講師として立ち、人材育成に注力しています。

ハード面では、完成した本館や厚生会館「Ai-terraceあいテラス」に加え、今後、生産現場の休憩所や浴場、駐車場などの整備も順次進め、より働きやすい環境づくりを推進していきます。

「2030年ビジョン」を推進していく上で一番大事なことは、社員1人ひとりの当事者意識、意識変革です。経営陣の考えが社員に伝わらずギャップができてしまうようでは、何の意味もありません。そのためには、各カンパニープレジデントが、自らの言葉で、社員1人ひとりが理解できるようにそのビジョンを伝え、一致団結して取り組んでいくことが必要だと考えて、それを実践しています。

90周年、100周年、そしてその先に⽬指す姿

企業は、収益向上のみならず、今や地球規模で持続可能な地球・社会へ貢献することの両立が必要な時代となっています。SDGsはその評価指標ともなる世界共通言語と言えます。「2030年ビジョン」の実現を通してSDGsの達成にも貢献していくことで、当社はこれからも、創業の精神「よきクルマは、よきハガネから。」を進化させた「よき社会は、よき素材から。」をミッションに、社会に新たな価値を提供し続けます

今年は創立80周年の節目であるとともに、90周年である2030年、またその先の100周年に向けた下地を作ることができたと感じています。強靭な筋肉体質への「大変革」のスタート年として、「Aichi Way」「ブランドスローガン」「労使協調宣言」に基づき、先人たちから引き継がれたマインドや意思を胸に、「2030年ビジョン」実現に向けて邁進することが、愛知製鋼の企業価値を高めていくことに繋がると確信しています。

創立100周年を迎える20年後にも、社員がイキイキと日々笑顔で働ける会社であり続けたい。そのためにも、この大変革期に生き残り、年輪的成長を果たすため、全社員が心を1つに力を1つに、モノづくり力の向上とESG経営実践に向け、全員参加で取り組んでまいります。
今後の愛知製鋼グループにご期待ください。