社会

人的資本経営の強化

急速な脱炭素化の進展など不確実性の高い状況においても、変化する社会のニーズを的確に捉え、素材メーカーとして新たな価値を提供し続けるのが当社の使命であり、その源泉となるのが人的資本であると当社は考えています。
仕事をするうえで大切にすべき価値観としてこれまで継承してきた「Aichi Way」と、素材メーカーとして培ってきた技術・技能を強みに、一人ひとりが役割の変化に応じたスキルを身につけ、意欲的に挑戦することで能力を最大限に引き出し、企業としての成長に繋げるために人的資本経営の強化に取り組んでいます。具体的には「健康と安全・安心」な職場環境のもと、「多様な人材が活躍」できる場や制度を整備し、 個人と会社の「エンゲージメント」を高め、自然に人が育つ土壌を整えたうえで、「基礎力を鍛え、技を磨く一流のプロ集団」を目指した人材育成に取り組んでいます。

人的資本経営の強化

ダイバーシティ&インクルージョン

多様な価値観・能力・経験を持った社員が、互いに認め合い、相互研鑽して能力を発揮することで、新たな価値創出に繋がると考えています。 そのため多様な人材の採用や、能力を発揮できる制度・環境の整備に取り組んでいます。

女性の活躍支援

女性が自らのありたい姿に向けて、柔軟な働き方を選択できる環境の整備に取り組んでいます。当社では、研修などを通してキャリア形成を支援するとともに、ライフイベントと仕事の両立をサポートするための、育児支援制度や介護支援制度を軸とした「ナイスファミリー制度」に加え、「コアタイムのないフレックスタイム勤務」「在宅勤務制度」などを導入・整備しています。全ての基幹職に対して育児支援制度に関するe-Learningを実施するなど、職場や上司の理解を促進し、性別に関係なく育児休業を取得しやすい環境を整備するなど、意識面への取り組みにも注力しています。2022年度は前年の2倍にあたる22名の男性が育児休業を取得するなど、成果があらわれてきました。今後も、多様な価値観を尊重し、性別に関わらず誰もが活躍できる環境づくりを推進し、全ての従業員が生活と仕事を両立することができる環境づくりに取り組んでいきます。

ナイスファミリー制度概要
ナイスファミリー制度概要
  2022年度
女性管理職比率※1(人数) 1.0%(4名)
男性従業員の育児休業取得率※2(人数) 33.3%(22名)
男女賃金差異※1 ※3(%) 全労働者 66.5%
正社員 68.2%
パート・期間社員 68.7%
  • 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」の規定に基づき算出
  • 「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。
  • 当社の給与制度および評価制度において、性別による差異はなく、男女の勤続年数や基幹職の女性比率、給与水準の異なる職種別男女比率などが、男女における賃金差異の要因となっております

シニアの活躍

将来的な労働力人口の減少、年金の支給開始年齢の引き上げおよび現場力の維持・向上の観点から、今後はシニア社員(60歳以上)が増加する見込です。当社では、定年退職後から年金受給開始までの期間、希望者全員が継続して働くことができる「ナイスシニア制度」を設けています。シニア社員がイキイキと働き続けられるよう労使で議論しながら、働きやすい作業環境の整備や処遇の見直しを実施しました。また、定年後の人生をあらためて考える機会として、55歳到達者を対象に「働き方」や「退職金と年金」「健康と食生活」などをテーマとしたセミナーを開催するなど、シニア社員の自律的なキャリア形成に向けた取り組みも実施しています。

障がい者のイキイキ職場拡大

障がいのある社員が、製造現場や事務部門など幅広い職場で活躍できるよう、さまざまな施策に取り組んでいます。意欲や個人の特性と業務の適性を重視し、職場実習や面談を重ねたうえで、配属職場を決めています。配属後も、本人との定期的な面談や受入職場へのフォローなどの支援や配慮を「障がい者職場生活相談員」が中心となり実施するなど、能力を最大限に活かすための取り組みを行っています。また働くうえでの障壁を取り除くため、バリアフリー整備やキャリアアップの支援、社員の啓発活動や意識向上の取り組みを行い、受入職場の拡大にも注力しています。

キャリア採用

複雑化が急速に進む現代において、事業を通じた社会課題の解決には、これまで以上に高度な知識や多様な経験、能力が必要と考えています。そのため、特に重点領域において、キャリア採用に注力しています。
2022年度は総合事技職において16名を採用しました。(中途採用比率:44.8%)

キャリア採用

人材育成

「伝承」「感謝」「創造」をキーワードとする愛知製鋼グループの社員全員が持つべき普遍的な価値観である「Aichi Way」を実践し、どのような時代でも必要不可欠な「基礎力」と変化に応じた必要な「専門性」を高め、主体的に考え行動できる人材の育成に取り組んでいます。

Aichi Wayの実践

先達が築いてきた技術・精神を「伝承」し、ともに働く仲間に「感謝」し、世のため人のため、仲間のためを思い「創造」を繰り返す、「Aichi Way」の考え方が人材育成のベースになっています。

Aichi Way

基礎力と専門性の強化

業務に必要な基礎力として、仕事の基本である「問題解決力」、強い現場力のための「技能」に加え、新たに「デジタルリテラシー」を加えた3つの柱で強化に取り組んでいます。問題解決力と技能は現地・現物を原則にOJT(現場実務教育)を通して身につけ、その効果をOff-JT(集合教育・研修など)で高めることを基本としています。デジタルリテラシー教育はe-Learningを中心に、個人の習熟度に適した教育メニューを提供することで、柔軟な教育を展開しています。また自己啓発の取り組み支援として、通信教育や学習補助・資格取得奨励制度を充実させ、専門性の強化を図っています。

基礎力と専門性の強化

技能向上

業務遂行上必要な専門知識、技能の向上を図るため、階層別研修でPM実技研修を実施。また、社員が自主的に挑戦している技能検定に対して、奨励金や訓練環境・情報の提供などにより、技能向上をサポートしています。

研修指導員育成人数(累積)
研修指導員育成人数(累積)
技能検定合格者数
技能検定合格者数

OJTとOff-JT

「現地・現物」での経験や学びが人を育てるとの観点から、OJTを積極的かつ計画的に実践しています。社員一人ひとりが将来のキャリアプランを考え、その実現に必要な技能や知識の習得と能力開発に向けた業務アサイン・目標について、定期的に上司と話し合う仕組みを設けています。また各種研修では、OJTとOff-JTの相乗効果を目的に先輩社員が後輩の指導を担当することや、参加者の意識を高めるために経営トップが自らの経験を踏まえたメッセージを発信するなど、研修の効果を高めるための工夫をこらしています。

デジタルリテラシー教育

激しく変化するビジネス環境に対応し、競争力を維持・向上するには、スマートファクトリーなど製造現場での取り組みに加え、業務そのものや組織、企業文化・風土を変革するためのDX推進が必要です。このため新たな教育を導入し、DX人材育成の取り組みを加速しています。2022年度は総合事技職の全員を対象に、e-Learningを中心にしたデジタル知識研修を実施しました。2023年度からは、DX推進を牽引するDXリーダーの選抜・育成を中心に取り組んでいきます。

デジタルリテラシー教育

幹部人材育成の取り組み

将来の経営を担う人材を計画的に育成するため、全社視点で「見て」「考え」、経営発想ができるマネジメント・リーダーシップの習得と、胆力や視野、スピード感など、より高い職責を担うために必要な素養を磨く教育を実施しています。経営役員自らが講師を務めることで、対象者にはコア人材としての自覚を持たせ、役割を全うするためのマインドセットに力点を置いたものとなっています。継続的に経営人材の育成に努めることで、経営を支える人材を確保していきます。

健康と安全の取り組み

基本的な考え方

当社は創業以来、人を大切にする経営を実践してきました。人を大切にする経営とは、社員が心身ともに健康で活動的な生活を送り「価値ある人生」と「社員・家族の幸せ」を実現し、社会に価値を提供することにつなげる経営です。「健康と安全はすべてに優先する」という基本理念のもと「社員の健康・安全」を重要課題と位置づけ、心と身体の健康保持・増進をに努め、人にやさしい安全・安心な職場づくりを推進しています。

健康経営の実践

社員の健康保持・増進に取り組むことは、組織の活力向上や生産性の向上などの効果をもたらすと考え、持続的な成長のため「健康経営」の実践に注力しています。中期経営計画において健康に関する定量的な目標を定め、PDCAを回すことで継続的な改善に取り組んでいます。特に生活習慣病予防とメンタルヘルスを重点課題に掲げ、会社、健康保険組合、労働組合が連携しコラボヘルスを推進することで諸施策の充実に努めています。こうした取り組み・活動が認められ、2023年には6年連続で「健康経営優良法人」に認定されました。

  • 保険者と事業者が積極的に連携し、明確な役割分担と良好な職場環境のもと、加入者の予防・健康づくりを効率的・効果的に実行すること

推進体制

推進体制
健康経営優良法人

生活習慣病予防

生活習慣を改善し健康増進を図ることを目的に、社員の健康意識向上と行動変容を促すために「健康チャレンジ8」活動を推進しています。体重・朝食・飲酒・間食・禁煙・運動・睡眠・ストレスの項目に関連する健康習慣の実践に向けて、職場対抗イベントを実施するなど社員・職場が主体的に楽しく工夫をこらしながら健康づくりに取り組んでいます。

メンタルヘルス

メンタル相談窓口の設置、一般社員・管理監督者双方への教育、精神科顧問医によるメンタル不調者への相談対応等により、発生の未然防止と早期発見・早期ケアに取り組んでいます。また年に1回、全社員を対象にストレスチェックを実施し、高ストレス者・高リスク職場へのケアなどを通じて、こころの健康づくりを推進しています。

ハラスメント

ハラスメントは個人の尊厳を不当に傷つけ、職場の秩序を乱すばかりでなく、経営に重大な影響を与える問題であり、ハラスメントのない職場づくりに労使が一体となり取り組んでいます。ハラスメントを防止するための措置や会社・社員が遵守すべき事項を定めた「愛知製鋼ハラスメントガイドライン」を策定し、全役員・社員へ教育しています。またハラスメントに関する専用相談窓口を社内・社外に設置しているほか、職場ごとに相談員を置くことで組織的に発生の抑止・早期発見・早期対応に努めています。寄せられた相談・通報や問題事案は、労使双方を委員とする調査委員会で速やかに精査・事実確認を行い、厳正な対処や管理監督者への教育などを通じ、再発防止に取り組んでいます。2022年度は職場づくりのサポート役、アンテナ役として設置している「職場相談員」の利便性や効果を高める目的で、遠隔地や交代勤務の職場において増員しました。また、ハラスメントに関する「労務ニュース」を定期的に発行することで、ハラスメントに対する意識向上に取り組んでいます。

ハラスメント防止体制基本概念図

ハラスメント防止体制基本概念図

安全

基本的な考え方

当社グループは「安全は全てに優先する」との認識に立ち、安全衛生基本理念に基づき、社員を含め構内で働く全ての人が安全・安心に働ける職場環境を構築し、「安全文化を有した企業」への変革を目指して取り組んでいます。

安全衛生基本理念

「安全な作業、確実な作業、熟練した作業、安全な作業は作業の入り口である。わたしたちは、まずしっかりとこの入口を通りましょう」

推進体制

社長の直轄部門として設置している安全衛生環境部を中心に労働災害の低減・未然防止、安全な人づくり、点検・監査などに取り組んでいます。「全ての災害・事故はゼロにできる」という信念のもと、全社方針をカンパニー・本部、グループ会社に加え協力事業所とも共有することで、構内でともに働く人々が、安全かつ健康的に働ける職場環境の構築に取り組んでいます。

推進体制

活動方針

未然防止に向けて、安全マネジメント、本質安全設計、安全人間づくりの3本柱を軸に安全活動を展開しています。

活動方針

2022年度の取り組み

安全マネジメント

安全大会

全国安全週間に合わせて開催し労働災害発生状況を共有することで活動方針の統一を図ってます。

オールアイチ安全大会
オールアイチ安全大会

現場支援

よりよい作業の提案、困り事の改善を通じ構内で作業する全ての人々の活動を支援することで未然防止活動を促進しています。

寄添い安全巡視
寄添い安全巡視

本質安全設計

トップ点検会

経営層が職場特有の危険源排除対策を現地・現物で指導・共有することで安全取り組みの横展開を推進しています。

トップ点検会
トップ点検会

過去災害の学びと共有

過去に発生した災害の対策維持状況を点検することで類似災害の再発防止を図る取り組み。

災害現地現物点検会
災害現地現物点検会

安全人間づくり

技能競技大会

日頃の安全意識と技能訓練の成果を競技会を通じて確認・研鑽しあうことでレベルアップに取り組んでいます。

フォークリフト安全運転競技会
フォークリフト安全運転競技会

災害・事故の風化防止

災害・事故の背景にある真因を学び「考動」に活かす「心」を伝承することで「考動人間」の育成に努めています。

伝心館での教育
伝心館での教育
休業災害件数・休業度数率
休業災害件数・休業度数率

働きやすい風土づくり

基本的な考え方

会社と社員が目標を共有し、ともに成長し、社員一人ひとりが能力を最大限に発揮するには、高いエンゲージメントと働きやすい職場風土が必要です。そのために、仕事を通した成長を感じ、仕事への意欲を持ち続け、働きがいを高めることを目的として、定期的に社員エンゲージメントを調査し、必要な施策を実施しています。また、オフィス環境や食堂・トイレなどの整備を進めることで、安心で快適に働ける環境の充実に取り組んでいます。

活動事例

区分 事例
コミュニケーション
  • 挨拶運動、“さん”づけ運動
  • 経営情報を管理監督者が職場に伝え話し合う「I-Time」制度
職場環境
  • 現場の休憩所改善(面積拡大、施設充実など)
  • 女子更衣室のスペース拡大
福利厚生
  • 新独身寮の建設
  • カフェテリアプラン導入
  • 設定された福利厚生メニューの中から、社員自らが付与されたポイント内で、好きなものを選択できる制度
新独身寮「白扇寮」の外観
新独身寮「白扇寮」の外観
生活支援
  • 食堂利用費補助
  • ワーキングウェア、事務服購入費補助
  • 高速道路通勤費補助
  • 奨学金返済補助
  • 車検費補助 等
健康支援
  • 各種ドック/健診利用補助
  • スポーツ施設利用費補助 等
生活支援
  • 民間家賃補助
  • 住宅ローン返済補助 等
育児・介護支援
  • 保育施設/サービス利用費補助
  • 介護施設/サービス利用費補助 等
リフレッシュ支援
  • 旅行費補助
  • リラクゼーション施設利用費補助 等
財産形成・保険支援
  • マイ貯蓄年金拠出補助
  • ハッピーライフ保険料補助 等
多様な働き方支援
  • 在宅勤務用パソコン用品購入費補助
  • 家事代行利用費補助 等
自己啓発
  • TOEIC受験費補助 等

エンゲージメント評価の推移

エンゲージメント評価の推移(1)
エンゲージメント評価の推移(2)

エンゲージメントを高める取り組み

当社では全社員を対象としたエンゲージメント調査を毎年実施しています。仕事に対する意欲、仕事を通した成長の実感や上司の支援、職場風土など、様々な観点で分析した結果を踏まえ、各種人事施策の展開や、各職場のマネジメント改善に取り組んでいます。また、職場づくりで重要な役割を果たす管理職に対しては、有識者の講演会やリーダー研修などを実施し、マネジメント力向上に取り組んでいます。2023年度には、職場ごとの分析を深く掘り下げ、改善の方向性を明確化するために、エンゲージメント調査の改善に着手し、従業員の幸せと成長を目指したより良い職場風土の実現に向け取り組んでいます。

研究開発に関する取り組み

研究開発による貢献分野

当社は、「2030年ビジョン」にもとづき、事業を通じた社会課題の解決に向け、「再生可能なエネルギー」「健康な生活」「食料の安全確保」「安全な公共・交通システム」への貢献を目指し、次世代向け機能商品の開発を進めています。2030年開発ビジョンでは、「自動運転」「自動車の電動化」「エネルギー」「食料」「健康・安全」を重点5領域と定め、次世代モビリティ開発と人々を豊かにする開発に注力しています。

「鍛鋼一貫「」素材メーカー」の強み

原料である鉄スクラップに多種多様な成分を加え、強度や耐熱性などの特性・機能を持つ特殊鋼を作り上げ、鍛造品に仕上げるまでを自社内で行う「鍛鋼一貫」の強みと創業以来培ってきた「素材メーカー」としての知見を活かし、社会の変化やニーズに応じた製品を開発しています。

鍛鋼一貫開発

鍛鋼一貫開発

素材技術の広がり

素材技術の広がり

「標準化活動」への取り組み

研究開発の成果を広く社会に還元する取り組みとして、当社は標準化活動に注力しています。新たな製品や技術に対する基準や規格を制定することは、品質と信頼性の確保に不可欠であり、顧客満足度の向上や市場導入の円滑化に繋がります。当社では、標準化活動を推進するため、社内体制を整備しました。

標準化推進体制

研究開発の責任者である開発本部長を最高標準化責任者CSO(Chief Standardization Officer)とし、CSOを委員長、各カンパニーの事業統括部長および各開発部の部門長らを部門別統括者、各担当部署の室長を委員とする標準化推進委員会を設置し、標準化活動を推進しています。今後は戦略的な標準化活動を推進するとともに、社内啓発や標準化人材の育成に注力します。

標準化推進委員会

標準化推進委員会

知的財産に関する取り組み

基本方針

当社は「攻めの知財(事業拡大、挑戦)」「守りの知財(事業安定)」「基盤活動(人材育成、体制づくり)」を重点方針として定め、それぞれに目標を設定し、年輪的成長につながる知的財産活動の推進に取り組んでいます。

推進体制

開発本部長を委員長とし、各カンパニー・本部の統括部長および技術系部門の部門長らを委員とする発明考案委員会を設置し、知的財産活動を推進しています。

発明考案委員会

発明考案委員会

新規ビジネス特許の強化

従来は研究開発の成果である知的財産の保護が中心でしたが、近年はこれに加え、開発部門と知財部門が連携を強化し、新たな価値創造につながる戦略的な特許出願による質の向上に取り組んでいます。特に新規ビジネス関連分野に注力しており、質の高い特許権の保有件数が増加しています。今後も自社の優位性確保や新規ビジネスの拡大に資する特許ポートフォリオの構築を目指し活動を推進します。

特許保有件数推移

特許保有件数推移

新規ビジネス創出の取り組み

GMPSが実現する自動運転

当社は、独自に開発したMIセンサにより、厳しい環境下でも道路に配置した磁気マーカを検知することで、自動車の位置推定をミリ単位の高い精度で可能にする自動運転支援システム「GMPS」の開発・早期実用化に向け、取り組んでいます。2017年から国や地方自治体、民間企業・団体と多様な場所・環境での実証実験を行い、性能・信頼性の面で高い評価を得ています。2022年12月には初めての社会実装例としてJR東日本の気仙沼線BRTにおいて、柳津駅から陸前横山駅間で運用されている自動運転バスに採用されました。その他にも工場敷地内における牽引車の自動走行など、今後も多くの場面での活用が期待されています。超高感度なMIセンサ、良品廉価な低磁力マーカ、独自の磁気ノイズ除去システムなどを実現した高い技術力を活かし、安全・安心なモビリティ社会の実現に向け、取り組みを進めていきます。

MIセンサを多数搭載したセンサモジュール/磁気マーカシステム
MIセンサを多数搭載したセンサモジュール
磁気マーカシステム

不良土壌での食料増産を可能にする次世代鉄肥料「PDMA」

懸念される将来の世界的な食料問題の解決策の一つとして注目されているのが、全世界の陸地の約3分の1を占めるアルカリ性不良土壌における食料増産です。当社では、これを可能にする生分解性の次世代鉄肥料「PDMA」の開発に成功しました。これまでにトウモロコシや稲などのイネ科植物に加え、カボチャやマメなどの非イネ科植物でも成長を促進させる効果があることが示されています。現在は「人工鉄キレート材」が一般的に使用されていますが、土壌に残留するため環境への負荷が懸念されている一方で、当社の開発した次世代鉄肥料PDMAは生分解性があり土壌で分解されるため、環境負荷が小さくなります。現在は実用化を目指し、北米をはじめとする世界各地で栽培実験を行うとともに、事業化に向けたプロセス開発に取り組んでいます。

PDMA無し
PDMA使用
アルカリ性不良土壌における稲の屋外栽培実験
(左:PDMA無し 右:PDMA使用)

品質経営の実践、モノづくりの底力向上

当社は創業以来、材料設計から鋼材、鍛造、部品生産までを一貫して手掛ける「鍛鋼一貫」のモノづくり力にこだわり、自動車を中心とした産業界に欠くことのできない、高い強度と耐久性、加工性を有する高機能かつ高品質な材料・部品をお客さまに提供し続けてきました。その良品廉価で安定的な製品供給体制を支えてきたのがTPS(トヨタ生産方式)、TQM(総合的品質管理)、TPM(全員参加の生産保全)による品質経営の実践とモノづくり力の進化です。これを基盤に、地政学リスクや急激な物価変動など不確実性の高まる中、変化に強い生産体制の構築に取り組んでいます。

品質経営の実践、モノづくりの底力向上

TPS活動

当社では、TPSの2本柱である「ジャスト・イン・タイム」と「自働化」の考えのもと、「徹底的なムダ排除による原価低減」を推進し、リーンなモノづくり力の向上に努めています。各カンパニーが、TPSの視点で把握した原価低減のための固有課題と改善テーマを抽出し、活動を中期計画に落とし込むことで、計画的に取り組んでいます。TPSを実践するための人材育成にも注力しています。選抜した人材をTPS推進リーダーとして、座学による知識学習だけでなく、ケーススタディなど現場で活用するための実践的学習を、TPS研修生制度として集中して行っています。加えて、実際の生産現場への導入をスムーズに進めるために必要な改善人材の育成に向け、より幅広い社員を対象とした階層別教育を拡充し、役割に応じて求められるTPS手法の習得を推進しています。この「原価低減」と「人材育成」の活動を両輪として、変化の激しい時代でも柔軟に対応できる生産体制を構築しています。

改善テーマ

区分 取り組み概要
省人 一人工の追求、設備の寄せ止め
リードタイム短縮 生産の小ロット化、整流化
生産能力増強 非可動時間の低減、原単位の改善
工数低減 非可動時間の低減、MCT短縮
  • 一つの部品を機械で加工・組立するのに要する時間のこと

TPS人材育成

TPS人材育成

TQM活動

TQMをベースとした品質経営の実践

当社はTQMの基本理念である“お客さま第一”、“全員参加”、“絶え間ない改善”をベースに、「品質と仕事の質向上」人と組織の活力向上による、柔軟で強靭な企業体質の構築に向け、グループ一体となったTQM活動に取り組んでいます。

TQM活動の展開

TQM活動の展開

お客さま第一の自工程完結

トヨタ自動車の製造現場から生まれた「品質は工程で作り込む」の考えのもと、後工程を含めたお客さまに不良品を流さない、常に満足させる製品を納期通りに届けるための「自工程完結」の活動を推進しています。製造現場はもとより、スタッフ部門にも展開し、競争力の強化を目指し取り組んでいます。

全員参加によるQCサークル活動

当社では職場における業務改善として、小集団によるQCサークル活動の定着・拡大に取り組んでいます。チームで問題点を見つけ、課題を明確化し、対策を立案・実行することを通じ、人材育成と組織の活性化を図っています。2022年度は163チームが活動しており、14事例が社外で表彰されました。また個人による創意工夫提案活動にも積極的に取り組んでおり、2022年度には全社で約3,000件の提案がありました。

全員参加によるQCサークル活動

技術の高度化に向けた絶え間ない改善

自動車産業は100年に1度の大変革期であり電動化シフトなどに伴い、求められる品質も変化しています。当社では変化する品質に応え続け、競争力を維持・強化するため、IoT、ビッグデータ、AIなどの技術を活用できるエキスパート人材の育成に取り組んでいます。その成果を、設備の異常検知や画像解析を利用した検査の自動化・鋼材の結晶粒形の自動算出などに適用することで、絶え間ない改善に取り組んでいます。

AI実践事例 残材検知
AI実践事例 残材検知

TPM活動

高品質な製品を効率的に生産することを目的に、現場で働くメンバー全員が保全に参画し、計画的なメンテナンスを実施するTPM活動に取り組んでいます。生産設備に故障が発生する前に分析、対策、改善をすることで、人の行動や現場の設備を変革し、故障ゼロ、不良ゼロの実現を目指しています。2020年には活動のレベルアップを目的に再キックオフを実施し、「全員参加」、「初期清掃」、「設備に強い人づくり」の3つをキーワードに、経営トップから第一線の製造現場オペレーターまでの全員が参加する活動を、再スタートさせました。オペレーターの自主保全を最重点活動とし、生産設備の故障ゼロ、品質不良ゼロ、労働災害ゼロ、生産ロス削減による生産性向上など、定量的な目標を立て活動に取り組み、働きやすい職場環境の醸成に繋げています。再スタート時に策定したTPM活動マスタープランに沿って活動を推進し、2022年度には、自主保全士1級取得者は233人(取得率:17.8%)、設備総故障件数15%削減(21年度比)を達成するなど、着実に成果が表れてきています。今後は、新たに構築した「アイチ流TPM」(DXを駆使したデータ解析、見える化、故障低減)を推進し、さらなる競争力の向上を目指します。

TPM活動マスタープラン

TPM活動マスタープラン

ステークホルダーとの対話促進

当社は多様なステークホルダーとの関係に基づき事業活動を行っており、ステークホルダーと良好な関係を築くことは、企業価値向上にとって重要と考えています。ステークホルダーとの積極的な対話を通じて、社会のニーズや当社への期待を企業活動に取り入れるとともに、当社への共感を得ることで、お客さま、株主・投資家、従業員、サプライヤー、地域社会などすべてのステークホルダーとともに成長していきます。

ステークホルダー 対話促進の取り組み 2022年度実績
お客さま
  • お客様相談窓口
    ご意見に対する回答や社内へのフィードバックによる改善
問合せ件数 1,399
株主・投資家
  • 株主総会 事業報告、決算事項の審議・決議、株主さまとの質疑応答
  • 投資家との対話 決算や将来戦略の説明会、個別面談などを通じた対
機関投資家との対話回数(延べ)21
従業員
  • 定期的な労使協議会
    労使間の相互理解、協議・交渉、意見交換
  • 各種意識調査
    組織・職場風土や会社生活などに関する調査
労使懇談会開催数 17
サプライヤー
  • 仕入先総会 調達方針の共有、相互研鑽、パートナーシップの強化
参加社数 113
地域社会
  • NPOなどとの協働・ボランティア活動
    社会貢献活動や地域ボランティアへの積極的参加を通じたコミュニケーション
  • 業界団体との連携
    日本鉄鋼連盟などを通じた業界共通課題への提言、情報共有の促進
ボランティア参加人数(延べ)6,581

従業員との対話促進

当社が社会に価値を提供し、持続的成長を遂げるには、価値を生み出す源泉である従業員の高いエンゲージメントが欠かせません。従業員との対話を積み重ね、働きやすい職場づくり、人事制度を整備するとともに、従業員のエンゲージメントを高める取り組みを推進しています。創立80周年となる2020年には「労使相互信頼でいかなる困難も乗り越え、『笑顔あふれる会社』を全員で目指す」ことを労使相互で確認、共有のうえ「労使協調宣言」として調印しました。また、労使がこれまで以上に本音で意見をぶつけ合い、変革のスピードを上げていくために、労使の会議体を見直し、カンパニー・本部単位での労使懇談会を新たに設置しました。
カンパニー・本部レベルの身近な課題や対応策について、労使が率直に意見交換し、理解を深め、協力しあえるよう努めています。2023年度の取り組みの1つとして、コロナ後のコミュニケーションを活性化させるための挨拶運動を労使で取り組んでいます。また、多様性・風通しのいい職場・働きやすい職場づくりの観点から、全社員を対象にしたモラールサーベイの実施、現場の休憩所改善、立体駐車場や新独身寮の建設など、安心して働くための職場環境整備にも注力しています。

サプライヤーとの関係強化

特殊鋼をはじめとした当社製品の製造には、サプライヤーから供給される優れた原材料や部品、技術が不可欠です。またカーボンニュートラルや人権など様々なサステナビリティ課題への取り組みにおいてもサプライヤーとの協働が必要です。当社はサプライヤーとの緊密なコミュニケーションにより信頼関係を築き、ともに成長し、成果を分かち合うことのできる持続可能なサプライチェーンの構築・強化に取り組んでいます。

愛知製鋼調達基本方針はこちらをご覧ください

サプライヤーとのパートナーシップ強化

毎年4月に「豊鋼会総会」を開催し、国内の主要サプライヤーに対して事業環境や会社方針を説明し、安全・コンプライアンス・サステナビリティに関する取り組みや目標を共有しています。また安全・品質などの観点から、各社の状況に応じたアドバイスをする支援活動や、改善事例共有会やVA展示会を通じた相互研鑽、優良事例の横展開など、サプライチェーン全体での改善活動に取り組んでいます。カーボンニュートラルの実現に向けては、サプライヤーとの勉強会に加え、当社の技術スタッフが各社の省エネ取り組みに具体的なアドバイスをするなど、サプライヤーと一体となって推進しています。

  • 当社とのパートナーシップ・相互信頼に基づき、相互発展を目指すことを目的とした仕入先で構成された団体

サプライチェーン強靭化に向けて

自然災害や事故に加え、地政学リスクが高まっている中、当社では原材料・資材の安定調達に注力しています。仕入先の製造拠点の立地や原産地、工程などの情報を把握し、リスクを数値化することで、マルチソース化や在庫確保など必要な対策を取るとともに、初動や復旧対応を迅速に行える体制を構築しています。

地域社会との関係強化

持続可能な地域社会との共存・共栄

当社では、持続可能な地域社会との共存・共栄を目指しています。「良き企業市民」としての役割を認識したうえで、社会貢献活動などを通じたコミュニケーションを大切にし、事業活動への理解と信頼を得ることで、「いつまでもこの地にあり続けてほしい」と思われる企業に向けて活動に取り組んでいます。具体的な取り組みとしては、「クリーン」「グリーン」「クリエイティブ」「ボランティア支援」を4本柱として活動を展開しています。地域清掃活動である「クリーン作戦」、聚楽園駅前ロータリーの美観維持・向上を目的とした「花壇の整備」、地元の子どもたちに鉄の可能性や役割を学んでもらい創造性を育むことを目的に、東海市と協力して開催している「鉄の教室」などに継続して取り組んでいます。また「愛知製鋼ボランティア基金」を運営しており、社員や関係者への募金活動への協力呼びかけや、福祉団体・施設によるボランティア活動の支援を実施するなどしています。このような活動を展開することは地域との関係強化に加え、従業員の「社会課題の解決」に向けたマインド醸成と事業活動へのフィードバックに繋がっています。これからも持続可能な地域社会の実現に向け、従業員1人ひとりが貢献できるよう、活動の幅を広げていきます。

東海市が開催している「モノづくり道場」の一環として実施した子ども向け工場見学会の様子
東海市が開催している「モノづくり道場」の一環として実施した
子ども向け工場見学会の様子