TCFD提言に基づく情報開示
~カーボンニュートラルに向けて~

基本的な考え方

当社は、主要製品である特殊鋼条鋼の原料である鉄スクラップの溶解や、鋼材の加熱など各種製品の製造工程でCO2を直接/間接的に排出しています。このことから気候変動への対応をリスクと機会の両面から重要な経営課題と捉え、2021年9月に2050年までのカーボンニュートラル実現にチャレンジすることを宣言し、脱炭素に向けた取り組みを加速しています。
鉄スクラップを原料としてモノづくりを行う資源循環型企業として、素材や部品を通じて持続可能なモノづくりに貢献してきた強みを活かし、脱炭素社会の実現に向け、サプライチェーン全体でのCO2排出量削減に貢献する製品・サービスを開発・提供していきます。

TCFD提言への賛同と情報開示

2021年12月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明しました。気候変動が事業に与える影響とそれによるリスクと機会をシナリオに基づいて分析し、持続的な成長に向け、経営戦略に反映するよう検討を進めています。ここではTCFD提言が推奨する「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」のフレームワークに基づき、気候関連への取り組みを開示しています。

ガバナンス

当社では、気候変動を経営の重要課題(マテリアリティ)の1つとして特定し、KPIを設定のうえ、目標達成に向け活動を推進しています。気候変動を含む経営に重大な影響を及ぼすリスク・機会への対応方針・事業戦略・取り組み状況は、経営における重要事項を審議する「経営トップミーティング」で議論・審議しています。取締役会はその報告を受け、特に重要な事案は審議することで監督機能を果たしています。
気候変動に係る戦略の実行や目標設定、進捗を管理する機関として地球環境会議を設置しています。6つの分科会で構成しており、担当範囲を明確にすることで効率的・重点的に活動を推進しています。

ガバナンス

2022年度実績

  1. 取締役会
    • CO2排出削減目標の見直し(審議)
    • TCFD提言に基づく情報開示(報告)
    • カーボンニュートラルに向けた動向と当社推進状況(特別テーマ討議)
  2. 経営トップミーティング
    • 太陽光発電の導入検討(関・岐阜工場)
    • TCFD提言に基づく情報開示(審議)
    • GXリーグ賛同/参画
    • CO2排出量実績(毎月)

リスク管理

リスク全般は以下のプロセスで特定、評価、監督を実施しています。気候変動関連のリスクは、地球環境会議や経営トップミーティングで審議・報告することで影響と対応を明確化しています。

リスク管理

戦略

国際エネルギー機関(IEA)および、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)報告書などを参照し、今世紀末までに産業革命以前と比較し、世界の平均気温上昇が「1.5℃」と「4℃」の2つのシナリオにおける2030年の社会を想定し、リスクと機会の分析を行いました。

シナリオ別分析結果

  1. 1.5℃シナリオ
    主要顧客である自動車業界のCASE進展、鉄鋼業界への脱炭素化要求などはリスクと同時に、気候変動へ取り組むことで新たなビジネス機に会の創出につながると確信しています。
  2. 4℃シナリオ
    年々増加する自然災害リスクは、当社を含むサプライチェーンに影響を及ぼす可能性があることをあらためて確認しました。今後は自然災害への適応の取り組みを進め、事業継続計画(BCP)の継続的な見直し、情報収集強化によるサプライチェーンの強靭化やコミュニケーションの強化に引き続き努めていきます。

主なリスク・機会と対応の方向性(一部抜粋)

シナリオ 気候関連事象 当社への影響 対応の方向性
1.5℃ 自動車業界の大変革
  • 電動化
  • 自動運転
リスク
  • 電動化の進展による特殊鋼需要の減少および鍛造品などの部品需要減少
  • 電動車における特殊鋼、鍛造品需要の捕捉による事業維持
機会
  • 電動車向け材料・製品の需要増加
  • 自動運転市場の拡大
  • 高機能・高付加価値な材料・製品の開発(次世代電動アクスルなど)
  • 自動運転支援システム「GMPS」の普及拡大
社会の脱炭素要請の高まり
  • 電炉鋼需要など
機会
  • CO2低排出・リサイクル性に優れる電炉鋼需要の増加
  • 多様化する需要家ニーズに応える高品質・高機能な製品開発と安定供給体制の構築
カーボンプライシング導入
(炭素税など)
リスク
  • 化石燃料の使用に伴う操業コスト増加
  • 再生可能エネルギー価格上昇による操業コスト増加
  • 省エネ生産技術の開発や高効率設備の導入検討
  • 自家発電等での再生可能エネルギー導入拡大
原料・諸資材の供給制約 リスク
  • 鉄スクラップ需要増に伴う供給不足・品質低下・価格高騰
  • 希少金属・希土類の調達不安定化
  • 需要家と連携した循環スキームの増強・拡大、低品位スクラップ活用技術の確立
  • 調達マルチソース化などサプライチェーン管理の充実
4℃ 自然災害
(激甚化・頻発化など)
リスク
  • 自社拠点被害、サプライチェーン寸断による操業停止
  • 継続的なBCP対策、サプライチェーン強靭化による影響最小化

指標と目標

当社は自社の事業活動におけるCO2排出量の2030年度における削減目標を、これまでの35%から50%に引き上げました(2013年度比)。これまでも生産工程における徹底した省エネ活動や、太陽光発電をはじめとした非化石エネルギーの導入などの取り組みを、積極的に進めてきましたが、気候変動リスクが顕在化・深刻化し、脱炭素化社会への移行に向けた対応が喫緊の課題となる中、より積極的なカーボンニュートラルの実現に向け検討を重ね、目標の引き上げを決定しました。

指標と目標

2050年カーボンニュートラルへのロードマップ

目標の達成に向けたロードマップを策定し、計画的に取り組んでいます。①省エネの深化・追求②再生エネルギーの活用③脱炭素技術の開発・導入を軸に、工場ごとのロードマップを策定し、計画的に活動を展開しています。

2050年カーボンニュートラルへのロードマップ

具体的な取り組み

再生可能エネルギーの活用

当社では特殊鋼の製造工程において大量の電力を使用することから、徹底した省エネや効率性の向上に加え、再生可能エネルギー由来電力への転換が必要不可欠であり、積極的に導入を進めています。2022年度には「トラッキング付FIT非化石証書購入」※1「CNな都市ガス※2の導入」により、7つの工場のうち、5工場(関、岐阜、東浦、電子部品、刈谷)で実質的なカーボンニュートラルを実現しました。2023年度には2工場(関、岐阜)において、自社による太陽光発電の稼働を開始する予定です。今後も、さらなる再生可能エネルギーの活用を推進します。

岐阜工場の屋根に設置した太陽光発電パネル(2023年稼働開始)
岐阜工場の屋根に設置した太陽光発電パネル(2023年稼働開始)
  • 再生可能エネルギー(再エネ)の普及促進のために設けられた「固定価格買取制度」の対象となる非化石電源(石炭や石油といった化石燃料を使用せずに発電する電源)によって発電された電気の環境配慮の価値を証書化したもの
  • 天然ガスの採掘から燃焼に至るまでの工程で発生するCO2をCO2クレジットにより相殺(カーボンオフセット)したカーボンニュートラルLNGを活用するもの

水素の導入に向けて

燃焼時にCO2を排出しない次世代のクリーンエネルギーとして期待されている水素の活用に向けて、いち早く取り組みを開始しています。鋼材の熱処理工程における工業炉のバーナー燃料として、従来は都市ガスを使用してきましたが、水素も利用可能なバーナーを2022年度に導入しました。今後は水素燃焼時の鋼材への影響などの実証実験、実用化に向けた取り組みを進めています。水素の普及拡大には安定供給のためのサプライチェーン整備が必要です。当社は「中部圏水素利用協議会」への参加を通じて取り組みを進めています。本団体は地域横断的な水素需要創出、サプライチェーン構築を目指し、民間企業が集まる日本初の取り組みとして発足されました。当社はそのメンバーとして、工場で使用する都市ガスなどのエネルギーを水素に転換することでCO2排出の削減を目指しており、2030年度には1,000t以上を目途に導入する検討を進めています。今後も多様なクリーンエネルギーの活用にチャレンジすることで脱炭素社会の実現に貢献します。

サプライチェーンでの取り組み

脱炭素社会の実現には、自社だけでなくサプライチェーン全体での取り組みが必要不可欠です。当社では、サプライヤーや物流事業者と連携したCO2排出量削減にも取り組んでいます。従来から課題となっていた、物流におけるトラックの積載率向上と運行回数の削減を目的として、取引先全体に協力を呼び掛け、低積載率ルートの見える化による商流を越えた物流集約化に取り組みました。その結果、物流におけるCO2排出量を年間で従来比31%削減することができました。この活動により、当社と当社グループ会社であるアイチ物流株式会社は、「令和3年度 グリーン物流パートナーシップ会議」の「優良事業者表彰」にて「特別賞」を受賞しました。物流業界における2024年問題も踏まえ、今後もさらなる改善に向けて取り組んでいきます。

サプライチェーンでの取り組み
運行回数
CO2排出量

社会との協働

当社は、2022年9月に「GXリーグ基本構想」への賛同を表明、その後、経済産業省が主導する「GXリーグ※1」に2023年度より参画しています。現在は「市場創造のためのルール形成」に向けた取り組みの1つである「グリーン商材の付加価値付け検討WG※2」の一員として活動しています。今後、需要が見込まれるグリーン商材や低炭素商材の価値に関わる異種業界における共通ルールづくりに向けた提言を、メンバー会社と協力し策定しています。これらの活動を通じて、脱炭素に貢献する製品・サービスの普及と日本の特殊鋼業界の競争力維持・強化を図っていきます。

GXリーグ
  • GX(グリーントランスフォーメーション)に積極的に取り組む企業群が、経済社会システム全体の変革のための議論と新たな市場の創出のための実践を行う場として、2022年3月に経済産業省が設立
  • GXリーグに賛同を表明した企業による、賛同企業提案型ワーキンググループの一つ。グリーン商材・低炭素商材の価値創生に関わる共通ルールに関する提言の策定に向け活動している

サプライチェーンにおけるCO2排出量

スコープCO2排出実績

管理指標 CO2排出量(千t-CO2 算定方法
2013年度
(基準年)
2020年度 2021年度 2022年度
Scope1 239 217 258 220
  • 下記<Scope1,2算定方法>を参照
Scope2 556 345 379 397
Scope1+Scope2(2013年度比削減率) 795 562 637 617
(▲22%)
生産量排出原単位(kg-CO2/t) 546.4 470.0 441.5 456
(▲16%)
Scope3
 1.購入した製品・サービス - 718 948 793
  • 購入した原料・資材等の購入量(購入金額)に排出原単位を乗じて算定
 2. 資本財 - 44 30 37
  • 設備投資額に排出原単位を乗じて算定
 3. Scope1,2 に含まれない燃料およびエネルギー関連活動 - 111 126 121
  • 購入した電力・燃料の使用量に排出原単位を乗じて算定
 4 輸送、配送(上流) - 28 34 29
  • 省エネ法報告の輸送距離およびカテゴリー1購入量の輸送手段、距離に排出原単位を乗じて算定
 5. 事業から出る廃棄物 - 11 11 10
  • 種別の廃棄物量に排出原単位を乗じて算定
 6. 出張 - 0 0 0
  • 移動手段別支給金額に排出原単位を乗じて算定
 7. 雇用者の通勤 - 3 4 4
  • 移動手段別支給金額に排出原単位を乗じて算定

上表は千t未満を四捨五入しており、0は500t未満を表します。

<集計範囲>
Scope1,Scope2:愛知製鋼単体 
Scope3:愛知製鋼単体における該当カテゴリー
<Scope1、2算定方法>
「地球温暖化対策の推進に関する法律」、「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」、「エネルギー資源標準発熱量・炭素排出係数一覧表」(資源エネルギー庁)および契約電力会社の各年度の排出係数に基づき算定
<Scope3排出原単位>
「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース(Ver3.2)」(2022年3月、環境省)および「LCIデータベース IDEA version 2.3」(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 安全科学研究部門 社会とLCA研究グループ一般社団法人サステナブル経営推進機構)